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2025年10月12日

建設業経営者がやりがちなM&A交渉の失敗例3選(売り手目線)

事務所だより|岡山県の相続専門司法書士たてやま法務事務所

【建設業オーナーの盲点】「最後の大仕事」を台無しにする、M&A交渉3つの致命的失敗




長年、現場の最前線で泥にまみれ、京都の街並みを支えてきた建設業の経営者にとって、会社を次世代に譲り渡す「M&A」は、まさに人生最後の大仕事です。

しかし、現場では百戦錬磨の親方であっても、M&Aという「経営の出口」においては、良かれと思って取った行動が裏目に出てしまうことがあります。建設業界特有の「人情」や「現場優先の習慣」が、交渉の場では予期せぬリスクに変わるからです。




ここでは、後継者不在に悩む建設業オーナーが陥りやすい、代表的な失敗例を3つに絞って解説します。

読み終えたときに、「今から何を整えるべきか」が見える内容にまとめました。





将来の選択肢として聞いておきたい方が多いテーマです。

「売る」と決めていなくても、準備を始めるだけで選択肢が増える傾向があります。




① 従業員への「沈黙」が招く、最悪のタイミングでの離職




建設業の資産は、重機でも倉庫でもなく、現場を動かす「人」そのものです。施工管理技士の資格、職人の熟練技、そしてチームワーク。これこそが買い手企業が最も欲しがる宝です。





よくある誤解:「決まるまで隠し通すのが従業員のため」





多くのオーナーは、従業員を不安にさせたくない一心で、「最終契約のハンコを押すまで、誰にも言わない」という選択をします。噂が広まって仕事に支障が出ることを恐れ、孤独に交渉を進めるのです。




ところが建設現場の人間は、非常に鋭い嗅覚を持っています。社長の様子がおかしいこと、見慣れないスーツ姿の人間が事務所に出入りしていること。こうした違和感は、想像以上に早く察知されます。




何の心の準備もないまま、ある日突然「今日から親会社が変わる」と告げられる。この瞬間、従業員が抱くのは安心よりも、「裏切られた」という不信感になりがちです。

「社長が逃げた」「自分たちは道具のように売られた」という誤解が広がれば、信頼関係は一気に崩れます。




結果として、引継ぎ直前にエース級の現場監督やベテラン職人が「社長がいないなら、これを機に独立する」「他社に移る」と離職を申し出る事態が起きます。買い手にとって技術者がいない建設会社は「エンジンのない車」です。成約直前の破談という最悪の結末に直結します。



② 会社を支える「大黒柱」であり続けた結果、組織が「箱」に見えてしまう




建設業のオーナーは、長年現場の最前線で培った技術と判断力を持つ、いわば「現場の生き字引」です。難易度の高い現場の収め方、元請けとの駆け引き、材料の仕入れルート確保――。これらを社長一人の「勘」と「経験」で完遂させてきた会社ほど、M&Aでは注意が必要です。





交渉で起きがちなミス:「私がいたから回っている」を強くアピールしてしまう





オーナーは自社の価値を伝えようとして、「私がいたからこの工事は成功した」「この得意先は私との個人的な信頼で持っている」と熱弁をふるいます。自分の存在が不可欠だと示すことが、高い評価につながると信じてしまうのです。




しかし買い手が買いたいのは、「社長個人の超人的な能力」ではなく、「社長がいなくても利益を出し続けられる仕組み」です。

意思決定が社長に集中し、ノウハウが社長の頭の中にしかない会社は、買い手から見れば「社長が引退した瞬間に売上が消失するハイリスク案件」に映ります。




社長への依存度が高ければ高いほど、買収価格は叩かれるか、そもそも買い手がつかないこともあります。M&Aを意識し始めたら、あえて一歩引き、現場監督に権限を移譲し、「自分がいなくても現場が回る」体制を見せることが、むしろ評価を上げる近道になります。



③ 「どんぶり勘定」のツケを、最終精査で突きつけられる




現場を完遂させる情熱はあるが、事務や数字管理は後回し――。これは多くの中小建設会社が抱える課題です。

「通帳に金は残っているから大丈夫」という感覚で数十年経営してきたオーナーは、M&Aの最終段階で凍りつくことがあります。




M&Aの最終合意の前には、買い手側による「デューデリジェンス(資産精査)」が行われます。専門家が入り、過去数年分の帳簿や契約、労務、税務を細かく確認します。そこで露呈しやすいのが、建設業特有の管理の甘さです。





よく問題になりやすい例

・未成工事支出金の処理が実態とズレている(赤字現場が見えにくい)

・労務管理の不備(残業代・移動時間・社保加入など)

・預かり金や保証金、慣習的な資金のやり取りが未整理





経営者が「問題ない」と言い張って進めてきた交渉も、客観的な数字の矛盾が出た瞬間に、買い手の信頼は一気に落ちます。

「他にも隠し事があるのではないか?」と疑われれば、土壇場で買収価格の減額を要求されたり、交渉が打ち切られたりします。数ヶ月かけて積み上げた期待が、一瞬で崩れる瞬間です。





一度、専門家と現状を整理してみませんか



「とりあえず話を聞くだけで良い」です。無理な営業はいたしません。

まずは数字・許可・人の状態を棚卸しして、何がリスクで、何が強みかを一緒に整理します。

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一歩踏み出すことで、次に取るべき方向が見えてきます。




結びに:廃業という「マイナスの終わり」を避けるために




ここで挙げた3つの失敗に共通するのは、「経営者個人の視点」と「買い手(市場)の視点」のズレです。

現場では正しい振る舞いが、交渉の場ではリスクに見えることがあります。




もし今、「後継者もいないし、自分の代で畳もうか」と考えているなら、一度立ち止まってください。廃業は、これまで築き上げたすべてを壊すために、多額の原状回復費や清算コストを払い、文字通り「マイナス」で幕を閉じる選択になりがちです。




一方で、準備と理解を持ってM&Aに臨めば、

・会社の名と信用が残り

・従業員の雇用と生活が守られ

・オーナー自身も創業者利益を得て、晴れやかに引退できる

という着地が狙えます。




建設業のM&Aは、単なる売買ではありません。「技術と信頼というバトン」を次世代に渡す、誇り高き大仕事です。

失敗例を反面教師として、自社の「本当の価値」と「直すべき弱点」を整理するところから始めてみてください。




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