
「うちのような小さな印刷会社に、買い手なんて現れるのだろうか」
それが、私が最初に抱いた正直な気持ちでした。
創業から50年。地域に根ざし、地元企業や学校、団体の印刷物を支えてきました。
派手さはなくとも、仕事だけは誠実に続けてきたつもりです。
しかし、業界を取り巻く環境は静かに、しかし確実に変わっていました。
私は主に経理を担い、現場は長年会社を支えてくれたベテランの職人たちに任せていました。
彼らがいたからこそ、会社は回っていたのです。
ただ、印刷業界全体は縮小傾向。
デジタル化、価格競争、外注の増加。
仕事が急になくなるわけではないものの、将来に広がりを感じにくくなっていました。
そんな中で、避けて通れなかったのが後継者問題です。
「自分の代で終わらせてもいいのか」
「従業員はどうなるのか」
簡単に答えが出る問題ではありませんでした。
きっかけは、知人からの一言でした。
「最近は、小さな会社でもM&Aする時代らしいよ」
正直、最初は半信半疑でした。
M&Aと聞くと、「会社を売る」「乗っ取られる」というイメージが強かったからです。
それでも、話を聞くだけならと専門家に相談しました。
そこで初めて、秘密を守りながら、会社の価値をきちんと見てくれる仕組みがあることを知りました。
「この会社を必要としてくれる相手がいるかもしれない」
そう思えたことが、大きな一歩でした。
名乗りを上げてくれたのは、私たちより若く、勢いのある会社でした。
トップ面談の日は、正直かなり緊張していました。
ところが実際に会ってみると、印象はまったく違いました。
自然体で、こちらの話を丁寧に聞いてくれる。
「この人たちなら、会社を大切にしてくれるかもしれない」
理屈ではなく、感覚としてそう思えたのを覚えています。
交渉以上に悩んだのが、従業員への説明でした。
「会社を売る」という言葉に、彼らは強い不安を感じていました。
「年齢的に通用しないのではないか」
「都合よく切られるのではないか」
そこで、相手企業の経営陣に直接、従業員と話してもらいました。
「50代だから価値がない、なんてことはありません」
「むしろ、その経験こそが必要です」
その言葉に、従業員の表情が少しずつ変わっていきました。
実際、相手企業には、過去のM&Aで合流したベテラン社員が中心となって活躍していました。
今回の承継で一番驚いたのは、
私たちが当たり前だと思っていた人材が、外から見ると非常に価値が高かったことです。
相手企業は成長中でしたが、人材不足に悩んでいました。
そこに現れた勤続20年、30年の熟練工たち。
「雇用を守りたい」という私の思いと、
「人が欲しい」という相手の課題が、ぴたりと重なりました。
成約までにかかった期間は約3か月。
専門家が間に入り、冷静に整理してくれたからこそ、迷わず進めたのだと思います。
今、私の手元には、これまでの歴史に対する正当な対価があります。
それ以上に嬉しいのは、かつての仲間たちが、新しい環境で生き生きと働いている姿です。
廃業していたら、
お金は減り、人は散り、後悔だけが残っていたかもしれません。
M&Aは、「会社を売る」行為ではありませんでした。
未来を託す決断だったと、今ははっきり言えます。
「まだ売ると決めたわけではない」
「将来の選択肢として知っておきたい」
その段階でのご相談がほとんどです。
無理な営業は一切いたしません。
廃業・継続・M&A、それぞれを整理するだけでも構いません。
お問い合わせフォームの「お名前」欄は仮名でも構いません。
まずは、話を聞くだけで結構です。
一歩踏み出すことで、次に取るべき方向が見えてきます。
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