
京都の造園業は、寺社仏閣や京町家の庭園維持を通じて、日本の文化と景観を守る重要な役割を担っています。一方で、その経営は次のような深刻な課題に直面しています。
・「庭師」の技術継承と後継者不足: 剪定、石組み、植栽設計など、熟練の庭師の技はマニュアル化が難しく、後継者が見つからなければ技術の途絶が現実味を帯びてきます。
・体力的な限界と重労働: 高所作業や重い資材運搬など、体力的な負担が大きく、十分に休みが取りづらい働き方からの卒業を望む声が増えています。
・文化財・優良顧客との関係維持: 寺社仏閣、老舗旅館、個人邸宅など、長年付き合いのある顧客との信頼関係は、後継者がいなければ自分の代で途切れてしまいます。
・個人保証と設備投資の重圧: 高額な重機や車両、資材の購入に伴う融資と個人保証が、経営者個人の重い負担になっているケースも少なくありません。
会社売却(M&A)は、これらの課題を一挙に整理し、貴社が培ってきた「伝統の技術」「優良な顧客台帳」「施工実績」を、適切な相手に承継するための、現実的で前向きな選択肢です。
造園業のM&Aは、「技術者の評価」と「優良顧客との関係性の承継」がポイントになります。一般的な進め方は次の通りです。
Step1:売却動機と希望条件の明確化
引退時期、希望価格に加え、「庭師としての技術の継続」「個人保証の解除」「屋号や地域での信用の保持」など、譲れない条件を整理します。
Step2:M&A専門家の選定と契約
建設・緑化業界のM&A実績があり、造園業の技術評価に精通した専門家を選び、秘密保持契約(NDA)を結びます。
Step3:企業価値の算定と売却戦略の策定
財務情報に加え、熟練技術者の人数・年齢構成、管理している寺社仏閣や文化財等の顧客との契約状況、保有する重機・車両の状態などを総合的に評価し、企業価値を算出します。
Step4:買い手候補の探索とノンネームシートの作成
大手造園・緑化会社、土木・建設業からの多角化を狙う企業、地域外のホテル・観光グループなどに対して、社名を伏せた情報(ノンネームシート)で秘密裏にアプローチします。
Step5:トップ面談と基本合意書(LOI)の締結
経営者様と買い手企業のトップが面談し、庭師の技術の継承方針や、寺社仏閣との関係性をどのように守るかを話し合います。そのうえで条件交渉を行い、基本合意書(LOI)を締結します。
Step6:デューデリジェンス(DD)の実施とリスク対応
専門チームが、労務・法務・財務・資産などを詳細に調査します。造園業では、熟練技術者の在籍状況や退職リスク、建設業許可・関連資格の有効性、過去の安全管理や事故の履歴、重機・車両の償却状況やメンテナンス状態などが重点的にチェックされます。
Step7:最終契約書の締結とクロージング
DDの結果を踏まえて最終条件を調整し、最終譲渡契約書を締結します。個人保証の解除や、寺社仏閣・優良顧客との契約承継を確実に実行し、M&Aが完了します。
A. 寺社仏閣・優良顧客との絆の「見える化」
管理している寺社仏閣、文化財、老舗旅館、著名な個人邸宅などの顧客リストを整理し、過去の施工内容や継続年数を分かるようにしておきます。
「継続的な売上が見込める優良顧客」であることを客観的に示すことで、企業価値の評価が高まりやすくなります。
B. 技術とノウハウの文書化
可能な範囲で、「剪定のスケジュール」「庭園維持の年間マニュアル」などを文書化し、引き継ぎに対する誠意を示します。技術を形式知に近づけるほど、買い手は承継後の運営をイメージしやすくなります。
C. 個人保証解除の手続きを確実に行う
重機や運転資金への融資に対する個人保証の解除を、M&A契約の必須条件とすることが重要です。金融機関との交渉は専門家と連携し、書面上も明確にしておくことで、引退後の不安を残さない形にできます。
D. 引継ぎ期間と役割の明示
M&A完了後も一定期間(いわゆるPMI期間)、オーナー様が現場や顧客対応をサポートし、寺社仏閣や職人への橋渡しを行う計画を提示すると、買い手側の安心感が高まり、条件面にも良い影響を与えやすくなります。
後継者不在、重労働、個人保証の重圧は、貴社の持つ「京の庭師」としての唯一無二の技術と信用を途絶えさせてしまいかねません。
まずは、「貴社の持つ技術と顧客信用が、市場でどれほどの価値を持つのか」を整理してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
中小企業診断士として1000件以上の事業承継相談に対応してきた代表が、秘密厳守で現状をヒアリングし、造園業の実態に即した選択肢を一緒に検討します。
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