民宿・ペンション・小さな旅館を閉めようと思ったら|廃業の手続きと、宿を閉めずに引き継ぐ道【京都】

「そろそろ宿を閉めようか」。体力のこと、建物のこと、跡を継ぐ人がいないこと。小さな宿の主人がそう考え始めるきっかけは、一つではありません。

ただ、宿を閉めるのは、届けを1枚出せば済む話ではありません。そして、閉める以外の道もあります。2023年12月からは、宿を誰かに譲るとき、あらかじめ承認を受ければ、宿の許可ごと引き継げるようになりました。

長く泊まりに来てくれたお客さん、手伝ってくれている人、地域とのつながりをどうするか。この記事では、京都府内で民宿やペンション、小さな旅館を営む方に向けて、閉める場合と引き継ぐ場合の両方を整理します。

閉める前に知っておきたい、宿の「許可」のこと

宿を営むには、旅館業法の許可が必要です。許可の種類は、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業の3つです。以前は分かれていた旅館営業とホテル営業は、2018年6月15日に「旅館・ホテル営業」にまとめられました。

民宿やペンションは、規模や造りによって、旅館・ホテル営業の場合も簡易宿所営業の場合もあります。自分の宿がどちらの許可かは、許可を受けたときの書類で確かめられます。農家民宿は、施設の基準の一部が適用されない扱いになっています。

ここで知っておきたいのは、許可は建物ではなく、宿を営んでいる人(または法人)に出ているということです。宿を閉めれば、許可はなくなります。一度なくなった許可を、あとから誰かが使うことはできません。

廃業するとき、出す届けは1つではない

宿を閉めるときは、旅館業の廃止の届けを、廃止した日から10日以内に出す必要があります(旅館業法施行規則第4条)。京都市以外にある宿は京都府知事あての届けで、問い合わせ先は宿のある地域を管轄する保健所です。

食事を出すために飲食店営業の許可を受けている場合は、その廃業の届けも必要です。温泉の利用の許可を受けている場合は、やめるときの扱いを、許可を受けた窓口に確かめてください。個人で営んでいる場合は、税務署への廃業の届けも出します。

どれも、閉めた後の手続きです。次に、閉めた後に何が残るかを見ておきます。

閉めた後に残るもの

宿を閉めても、建物と土地は残ります。建物をそのまま置いておくか、壊して更地にするかで、その後にかかるお金が変わります。

壊せば解体の費用がかかり、残せば毎年の固定資産税と、傷んでいく建物の手入れが続きます。宿として使ってきた建物は、住まいとは造りが違うため、住宅として売ったり貸したりしにくい場合もあります。

閉めた後の建物のことまで考えると、宿として誰かに使い続けてもらうことが、建物にとっても一つの道になります。

宿を閉めずに、誰かに引き継いでもらう道

2023年12月13日から旅館業法が変わり、宿を事業ごと譲るときに、許可を引き継げるようになりました(旅館業法第3条の2)。譲る人と譲り受ける人が、あらかじめ都道府県知事などの承認を受けると、譲り受けた人が営業者の地位を引き継ぎます。個人で営む宿も対象です。

それまでは、宿を事業として譲っても許可は引き継げず、譲り受けた人が新しく許可を取り直す必要がありました。新しく取る場合は、今の基準に合わせて建物や設備を確認し直すことになり、手間も時間もかかります。

ここに落とし穴があります。承認を受ける前に譲渡の効力が生じてしまうと、この仕組みは使えません。その場合は、改正前と同じく、新しく許可を取ることになります。譲る契約を結ぶ時期と、承認を申請する時期を、先に決めておく必要があります。

食事を出すための飲食店営業の許可も、2023年12月から事業譲渡で引き継げるようになりました。こちらは宿の許可と違い、譲った後に届け出る手続きです。宿の許可は「前もって承認」、食事の許可は「後から届出」と、順番が逆になっている点に気をつけてください。

一方、温泉の利用の許可は、事業譲渡では引き継げず、譲り受けた人が取り直すことになります。温泉を使う宿の引き継ぎは、温泉旅館の売却の記事で詳しく書いています。

引き継ぐ相手として考えられる人

「こんな小さな宿を引き継ぐ人がいるのか」と思うかもしれません。宿を引き継ぐ相手としては、次のような人が考えられます。

近くで宿を営んでいる人。部屋数を増やしたい、別の場所にも宿を持ちたいという同業の人です。常連のお客さんや予約の流れ、これまでの口コミをそのまま生かせるので、宿としての形が残りやすい相手です。

宿を始めたい人。移住して宿を開きたいと考えている人などです。建物も設備もそろい、許可も引き継げるなら、一から始めるより早く営業できます。主人は代わりますが、宿は続きます。

地域で観光や体験の仕事をしている人。自然の中での体験や、農業、アウトドアの仕事をしている人にとって、泊まってもらえる場所があることは大きな意味を持ちます。宿は続きますが、泊まる人や使い方が変わることもあります。

どの相手に引き継ぐかで、長く通ってくれたお客さんや、地域とのつながりが残るかどうかが変わります。値段だけでなく、宿をどう続けてくれるかを、相手と話しておくことをお勧めします。

京都府の、京都市以外の宿の事情

京都府の旅館業の許可施設の一覧(2025年3月31日時点)を数えると、京都市以外の府域で許可を受けている施設は1,014か所です。そのうち簡易宿所が693か所で、約7割を占めます。

この一覧は許可を受けている施設のもので、すべてが今も営業しているとは限りません。それでも、京都市の外では、民宿のような小さな宿が宿の多くを占めていることが分かります。

小さな宿ほど、主人の体力や事情が、そのまま宿の続き方に響きます。だからこそ、閉めると決める前に、引き継ぐ道があることを知っておいてほしいと思います。

京都で宿の今後を考えている方へ

京都市以外にある宿の旅館業の手続きは、宿のある地域を管轄する保健所が問い合わせ先です。閉める場合も引き継ぐ場合も、承認や届けの順番を先に確かめておくと進めやすくなります。部屋数の多い旅館やホテルの場合は、解体費用と売却を比べた記事もあわせてご覧ください。

当社は、宿を閉めずに引き継いでくれる相手を探すお手伝いをしています。「閉めるしかないと思っていた」「引き継ぐ人がいるのか分からない」という段階から、ご相談いただけます。

この記事の数字と出典

項目 数字 出典
事業譲渡による旅館業の許可の承継 2023年12月13日から。譲る人と譲り受ける人があらかじめ都道府県知事等の承認を受ければ、譲り受けた人が営業者の地位を承継 旅館業法 第3条の2
旅館業の廃止の届出 廃止した日から10日以内に都道府県知事へ 旅館業法施行規則 第4条
旅館営業とホテル営業の統合 2018年6月15日から「旅館・ホテル営業」 旅館業法の一部を改正する法律(平成29年法律第84号)/旅館業法 第2条
飲食店営業許可の承継 2023年12月13日から事業譲渡でも承継。譲り受けた後、遅滞なく都道府県知事等に届出 食品衛生法 第56条
京都市を除く京都府域の旅館業許可施設 1,014施設(うち簡易宿所693)・2025年3月31日時点 京都府「京都市を除く京都府域 旅館業許可施設一覧」

最終確認:2026年9月28日

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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
京都府を中心に、小規模M&A・事業承継のご相談に1,000件以上向き合ってきました。完全成功報酬で、ご相談から成約まで代表が直接伴走します。
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