京都府の最低賃金は、2026年11月16日から時給1,180円になります。今の1,122円から58円の引き上げで、上げ幅は国が示した目安の56円を2円上回りました。
京都労働局の資料では、引き上げ後の1,180円を下回ることになる労働者の割合(影響率)は24.6%です。製造・小売・飲食・介護などの業種で、従業員30人未満(製造業などは100人未満)の事業所を対象にした国の調査による数字で、小さな事業所で働く人のおよそ4人に1人にあたります。パートやアルバイトを何人も雇っている小さな店や事業所ほど、影響は大きくなります。
「この人件費で、店を続けられるのか」。そう感じ始めた京都の経営者に向けて、何が変わるのか、人件費はどれだけ増えるのか、使える国の助成金、そして続けられないと感じたときの選択肢を、発効の前に整理します。
11月16日から、何が変わるのか
最低賃金は、京都府内の事業場で働くすべての人に適用されます。正社員だけでなく、パートやアルバイトも含みます。人を一人でも雇っていれば、守る義務があります。派遣で働く人には、派遣先の地域の最低賃金が適用されます。
最低賃金を下回る額で働いてもらうことはできず、下回って支払った場合は、50万円以下の罰金の対象になります(最低賃金法第40条)。本人が納得していても、下回る約束は無効です。
京都府には、業種ごとの「特定最低賃金」もありますが、独自の額が決まっているのは電気機械器具製造業だけです。飲食店、小売店、理美容、介護には特定最低賃金はないので、11月16日以降は1,180円だけを見れば足ります。
人件費はどれだけ増えるか
今、1,122円で働いてもらっている人の時給を、1,180円に上げる場合で考えてみます。
1時間あたり58円の増加です。週20時間働くパートの人なら、1週間で1,160円。1か月をおよそ4.3週とすると、1人あたり月に約5,000円、年に約6万円増えます。同じ条件の人が5人いれば、年に約30万円です。
実際には、今1,180円より少し上の時給で働いている人との差をどうするかも考えることになります。最低賃金に近い人だけを上げると、長く勤めてくれた人との時給の差が縮まるためです。
自分の店の数字で確かめるときは、「1,180円を下回っている人の、差額×月の労働時間」を人数分足すと、最低限増える額がつかめます。
影響が大きいのは、どんな事業所か
影響が大きいのは、パートやアルバイトの割合が高く、上がった人件費を値段に乗せにくい事業所です。
飲食店・小売店。時間帯ごとに人を配置するため、働く時間の合計が長くなりやすい業種です。仕入れの値上がりに加えて、人件費も上がることになります。
理美容。料金は自分で決められますが、なじみのお客さんが多い店ほど、値上げには慎重になりやすいものです。
介護。介護サービスの報酬は国が決めるため、人件費が上がっても、利用料を自分の判断で上げることはできません。処遇改善のための加算はありますが、上がった分の多くは事業所の中で受け止めることになります。
打てる手
最低賃金は下げられないので、打てる手は、増える人件費をどこで受け止めるかです。
値段を見直す。増える人件費から逆算して、1品、1回あたりの値上げ幅を考えます。
営業時間とシフトを見直す。お客さんの少ない時間帯を短くする、人を重ねて配置している時間を減らすなど、働く時間の合計を見直します。
国の助成金を使う。厚生労働省の「業務改善助成金」は、最低賃金の引き上げに向けた環境づくりを目的とした助成金です。中小企業や小規模事業者が、事業場で一番低い時給を50円以上引き上げ、あわせて仕事の効率を上げるための設備投資などを行うと、その費用の一部が助成されます。上限は条件によって最大600万円で、京都府内の事業場の場合、助成率は3/4です。
ただし、交付決定より前に設備を入れると対象になりません。また2026年度からは、時給の引き上げは申請の後に行う決まりになりました。先に上げてしまうと申請できません。申請の窓口は京都労働局の雇用環境・均等室です。
それでも続けられないと感じたら
「払えない場合、最低賃金を下げてもらうことはできないのか」。そう考える方もいるかもしれません。
最低賃金法には減額の特例がありますが、労働局長の許可が必要で、対象は試用期間中の人など、法律で決められた4つの場合に限られます(最低賃金法第7条)。売上が苦しいことを理由に下げられる制度ではありません。
値段も時間も見直した。それでも続けるのが難しい。そう感じたときの選択肢は、閉めることだけではありません。店や事業所を、働く人ごと引き継いでくれる相手に託す道もあります。引き継ぎなら、パートやアルバイトの人たちの仕事も、通ってくれるお客さんとの関係も残すことができます。
閉めると決めてしまえば、働く人は仕事を探し直すことになります。続けられないと感じた段階で、閉める以外の道も並べて考えることをお勧めします。
決めるなら、発効の前か後か
最低賃金が上がる11月16日を境に、判断の条件が変わります。
助成金を使うなら、発効の前しかない。業務改善助成金の京都府での申請期限は、最低賃金の発効日の前日、2026年11月15日です。予算の状況によっては、それより早く締め切られることもあります。発効してから考え始めると、この助成金は使えません。
続けるか引き継ぐかを考えるなら、早い方が選べる道が多い。11月16日を過ぎれば、上がった人件費を毎月払いながら考えることになります。引き継ぐ相手を探すにも時間がかかるので、今のうちに自分の店の数字を確かめておく方が、働く人に話す時期も含めて、落ち着いて選べます。
京都で店や事業所の今後を考えている方へ
11月16日から、京都府の最低賃金は1,180円になります。人件費の増え方は、パートの人数と働く時間で大きく変わります。
当社は、京都府内の小さな店や事業所の、続けるか引き継ぐかのご相談をお受けしています。「今の人件費で続けられるか分からない」「働く人の仕事を残せる道があるか知りたい」という段階から、ご相談いただけます。
この記事の数字と出典
| 項目 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 京都府最低賃金 | 時間額1,180円・2026年11月16日発効 | 京都労働局「新しい京都府最低賃金1,180円は令和8年11月16日に発効します」 |
| 引き上げ額 | 58円(前年1,122円・引上げ率5.17%) | 京都労働局「京都府最低賃金の改正答申」 |
| 影響率 | 24.6%(改正後の最低賃金を下回ることとなる労働者の割合。従業員30人未満〈製造業等は100人未満〉の事業所を対象とする最低賃金に関する基礎調査による) | 京都労働局「京都府最低賃金の推移」 |
| 最低賃金を下回ったときの罰則 | 50万円以下の罰金(地域別最低賃金) | 最低賃金法 第40条 |
| 業務改善助成金の申請期限(京都府) | 2026年11月15日(申請期間は地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日まで) | 厚生労働省「業務改善助成金」 |
最終確認:2026年9月28日
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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
京都府を中心に、小規模M&A・事業承継のご相談に1,000件以上向き合ってきました。完全成功報酬で、ご相談から成約まで代表が直接伴走します。
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