相談事例
2026年01月29日
京都のゲストハウスオーナーが知っておくべき、小規模M&Aの売却価格の決め方と相場
京都市内でゲストハウスを運営されるオーナー様にとって、後継者不在や異業種への転換による出口戦略は、これまで大切に育ててきた「宿のブランド」と「京都のファン」を繋ぎ止めるための重要な決断です。
長年築き上げた「圧倒的な高評価レビュー」や「独自の改修が施された京町家資産」を正当な対価として受け取る「小規模M&A」の最新相場と査定ロジックを解説します。
【スマホで30秒:この記事の結論】
- 売却相場:「時価純資産 + 利益の2〜4年分」。不動産所有か賃貸かで大きく変動。
- 評価の鍵:OTA(Booking.com/Airbnb)のスコア、清掃の仕組み、旅館業許可の承継性。
- 戦略的出口:廃業は内装の解体費(原状回復)で赤字のリスク。M&Aなら「稼働実績」を売却可能です。
1. ゲストハウスの企業価値を算出する「実務ロジック」
ゲストハウスのM&A査定では、一般企業の計算式をベースにしつつも、宿泊業特有の「将来の予約残(オンハンド)」と「口コミ資産」をどう数値化するかがポイントになります。
(時価純資産) + (修正EBITDA × 2〜4年)
① 不動産・設備の内訳と時価評価
自社保有物件(京町家等)の場合は、不動産鑑定に基づいた時価評価を行います。賃貸物件の場合は、敷金・保証金の権利に加え、リノベーションに投じた内装資産が評価対象です。私が査定を行う際は、特に「防火設備(自動火災報知器等)」や「水回り」の更新状況を注視します。京都の厳しい条例をクリアした設備が維持されていることは、買い手にとっての「即営業可能」という大きな付加価値になります。
② 修正EBITDA(実質利益)の算出
個人オーナーが自ら清掃やチェックイン対応を行っている場合、その労働時間を「外部委託(清掃代行等)した場合のコスト」として差し引いた後の利益を算出します。一方で、個人的な宿泊費や交際費、車両維持費などを利益に足し戻すことで、経営実態を浮き彫りにします。この修正後の利益が、営業権(のれん代)算出の基礎となります。
2. 譲渡価格を最大化する「営業権」の評価基準
買い手(宿泊チェーン、異業種からの参入、独立希望者等)が、高くても買いたいと判断する資産を深掘りします。
- OTA(オンライン旅行会社)のレビュースコア:
Booking.com、Expedia、Airbnb等での「9.0以上」といった高評価スコア。これは、新規開業では数年かかる「信頼」そのものであり、将来の安定した予約を約束する資産として高く評価されます。
- 予約管理(PMS)とオペレーションの自動化:
スマートロックの導入、自動チェックイン機の活用、清掃会社とのシステマチックな連携。オーナーが現場にいなくても回る仕組みができている宿は、評価倍率が上がります。
- 旅館業(簡易宿所)許可の適法性:
京都は特に宿泊施設の規制が厳しいため、適法に運営されている証明(消防法令適合証等)が完備されていることは絶対条件です。万が一、無許可部分やグレーな運用があれば、大幅な減額要因となります。
- 将来の予約残(オンハンド)の状況:
譲渡予定時期の数ヶ月先まで予約が埋まっている場合、買収初月からキャッシュフローが計算できるため、買い手にとっての安心材料になります。
3. 買収調査(DD)で問われる実務リスク
宿泊業のM&Aで、最終局面において減額要因となりやすいポイントを解説します。
- 賃貸借契約の「譲渡承諾」:賃貸物件の場合、オーナーから「運営主体の変更」に対して承諾が得られるか。承諾料の有無や、賃料の値上げ要求がリスクとなります。京都の古い地主様の場合、慎重な交渉が必要です。
- 近隣住民との関係値:過去に騒音やゴミ出し等で苦情があったか。地域住民とのトラブルを抱えている物件は、買い手にとって致命的な運営リスクと見なされます。
- 宿泊税の納付状況:京都市独自の「宿泊税」が適正に徴収・申告されているか。この不備はコンプライアンス違反として、譲渡の大きな壁になります。
4. 具体的シミュレーション:京都市内の町家ゲストハウス(売上1,500万円)
● 時価純資産:1,200万円
(内装資産時価、備品、預託保証金)
● 修正後の実質利益(EBITDA):500万円
(オーナー報酬を清掃外注費等へ置き換え調整後)
● 評価倍率:3.0倍
(OTAスコア9.5以上の高評価と自動化システムを評価)
● 営業権評価:1,500万円
譲渡想定価格:2,700万円
廃業を選んだ場合、こだわりの家具や備品は二束三文となり、さらに賃貸物件であれば多額の原状回復費用が発生し、手残りがほぼゼロになるケースも珍しくありません。M&A(事業譲渡)であれば、これまでの「集客力」と「レビュー資産」を現金化でき、リタイア後の生活資金を最大化することが可能です。インバウンド需要が回復している今こそ、売却価格はピークを迎えています。
5. 高値譲渡を実現するための準備
ゲストハウスのM&Aを成功させるためには、買い手が「運営をそのまま引き継げる」状態であることが不可欠です。
- 運営マニュアルの完備:清掃手順、緊急時対応、チェックイン案内などが言語化されていること。
- OTAアカウントの健全性維持:返信速度やキャンセル率を良好に保ち、レビュースコアを維持する。
- 固定費の可視化:光熱費、リネン費、清掃委託費などの月次推移をデータ化しておく。
京都のゲストハウス運営者様
オーナー様への実務相談
宿のブランド価値や高評価レビューをロジカルに数値化し、貴館の「本当の価値」を引き出します。廃業を決める前に、まずは現在の市場価値を確認してください。
- レビュースコアと将来予約を考慮した精緻な資産査定
- 近隣住民やスタッフに知られない、完全匿名での売却調査
- 譲渡後の運営承継と京都特有の地主交渉を含めたスキーム提案
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