2027年4月1日、技能実習制度は育成就労制度に変わります。監理団体の許可は、そのままでは新しい制度に引き継がれません。
組合員の会社には、来年も実習生が要ります。理事長が高齢で、次を誰がやるのか決まっていない。それでも組合を閉めれば、実習生と組合員企業の両方に影響が出る。そういう理事の方から、相談が届くようになりました。
そして今、新しい許可の申請受付は始まっています。9月30日という日付が、外国人技能実習機構の案内に書かれています。
すぐに決めなくていい部分と、今月中に向き合わなければならない部分があります。その線を、この記事で引きます。
先に言葉の整理をしておきます。協同組合は、株式会社のように「買う」ものではありません。監理団体の許可は法人に付いているので、事業だけを譲る形では許可は移りません。許可を活かすなら、法人を残して理事を代える形になります。売買のプラットフォームで「事業譲渡」と表示されている案件も、中身は多くがこの理事交代型です。この記事の「法人ごと引き継ぐ」は、その意味です。
2027年4月1日に、何が変わるのか
育成就労法の施行日は2027年4月1日です。この日をもって技能実習制度は育成就労制度に置き換わり、監理団体は「監理支援機関」に、外国人技能実習機構は「外国人育成就労機構」になります。
ただし、今いる実習生がその日に帰るわけではありません。経過措置が定められています。
- 施行日より前に認定を受けた技能実習計画にもとづいて実習中の方は、施行日以降も「技能実習」のまま続けられます(附則8条1項・9条1項)。
- 施行日より前に計画の認定と在留資格認定証明書の交付を受けた方は、2027年6月30日までに入国する必要があります(附則8条4項・9条2項)。
- 施行日以降は、技能実習計画の新しい認定申請はできません。
- 施行後も1号から2号へは進めます。3号へ進めるのは、施行日の時点で2号を1年以上行っている方に限られます(附則9条3項)。
この経過措置を最後まで使うと、技能実習は施行から3年目途、2030年3月31日まで残ります。以後は育成就労だけになります。
つまり監理団体には、二つの仕事が並びます。今いる実習生の監理を2030年3月まで続ける仕事は今の許可でできます。育成就労の受入れを新しく始める仕事は、今の許可ではできません。
監理団体の許可は、そのままでは残らない
育成就労で監理支援を行うには、監理支援機関としての許可が新たに必要です。今の監理団体の許可が自動で切り替わることはありません。既存の監理団体も、新規の申請をします。
申請の受付は、施行日に先立って2026年4月15日に始まりました。受付期間は2027年3月31日までです。申請先は外国人技能実習機構の本部審査課で、地方事務所では受け付けていません。
ここに9月30日が出てきます。機構の案内には、申請は監理支援事業を開始する6か月以上前までに行うこと、施行日以降早期に事業を行いたい場合は2026年9月30日までに申請すること、と書かれています。同時に、9月30日までに申請しても2027年4月1日の許可を確約するものではない、とも書かれています。過ぎても申請はできますが、4月1日に許可が間に合わなければ、その間、組合員企業は別の監理支援機関に頼むことになります。
申請に何が要るかも、機構の書類一覧に出ています。主なものを挙げます。
- 営利を目的としない法人であること。
- 直近2事業年度の決算書と法人税の申告・納税の書類。直近が債務超過なら、解消したことを示す必要があります。
- 監理支援責任者は常勤で、申請時点で過去3年以内に講習を受けていること(技能実習の監理責任者講習でも可)。
- 外部監査人の就任承諾と、外部監査人の講習受講。
- 認定送出機関との契約書。違約金や監理支援費以外の徴収を定める契約は、許可の取消しの対象になります。
法務省の改正法の概要には、監理支援機関について「外部監査人の設置を許可要件とする」「受入れ機関と密接な関係を有する役職員を、その受入れ機関に対する業務に関わらせてはならない」と書かれています。この二つが、技能実習の監理団体との大きな違いです。
「取り直してまで続けるか」という問い
外国人技能実習機構の一覧では、2026年9月時点で監理団体は全国に3,726あります。京都府内は32で、そのうち31が協同組合です。
京都労働局の集計では、2025年10月末の京都府内の技能実習生は7,258人。前年から7.6%増えています。技能実習生の45.8%は製造業で働いています。京都の監理団体の多くは、この製造業の組合員企業に支えられてきました。
その組合が、常勤の監理支援責任者を置き、外部監査人を確保し、債務超過なら解消し、6か月先を見て申請書を出す。人が足りている組合なら進められます。理事長が実務も兼ねている組合、職員が2人の組合では、この要件の一つ一つが重くのしかかります。
やめる選択も簡単ではありません。閉めれば、今いる実習生の監理を引き受ける先と、組合員企業の次の受入れ先を探すことになります。実習生にとって、監理団体が消えることは相談先が消えることです。
2027年4月、そして2030年3月。この二つの日付の間を、どの体制で渡るか。その問いは、申請書を書く前に立てられます。
法人ごと引き継ぐ、という選択肢
取り直すか、やめるか。その間に、もう一つの道があります。組合を法人ごと、次の運営者に引き継ぐことです。
最初に書いたとおり、協同組合は買えません。中小企業等協同組合法では議決権は出資口数にかかわらず1人1票で、1組合員の出資は総口数の4分の1まで。持分の譲渡には組合の承諾と、譲り受ける側の組合員資格が要ります。株式を買い集めて支配する形は、制度上できません。
それでも経営権は移ります。加入して、総会で理事に選ばれ、前の理事が退く。この手順を踏めば、法人は続き、許可も職員も送出機関との契約も、法人の中に残ります。売買のプラットフォームには、技能実習生を受け入れる協同組合の譲渡案件が複数掲載され、成約した例もあります。
引き受ける側にも動きがあります。新しく協同組合を作って許可を取るより、組合員企業と職員と送出機関との関係を持つ法人を引き継ぐ方が早い。そう考える同業の団体や、外国人材の事業を広げたい会社から、引き合いがあります。引き受ける側の確認事項は、別の記事で扱っています。
引き継ぎの5段階
協同組合を法人ごと引き継ぐときの手順は、株式譲渡とは別物です。順番に書きます。
1. 加入する
引き継ぐ側が、まず組合員になります。組合員になれるのは、定款で定めた地区の中で事業を行う小規模事業者かその組合です。地区の外にいる会社は、そのままでは加入できません。定款の地区を変えるには行政庁の認可が要るので、最初に定款を見ます。
2. 総会で理事を交代する
理事は総会で選ばれます。理事の3分の2以上は組合員か組合員法人の役員である必要があるので、引き継ぐ側の会社の役員が理事に入る形になります。理事の変更は機構への届出事項です。新しい理事に許可の欠格事由に当たる人がいないことを、事前に確認します。
3. 前の理事が退く。対価はどう受け取るか
前の理事は、持分の払戻しか譲渡で退きます。株式のように売却代金が入る仕組みではないので、対価の形は三つに分けて考えます。
- 持分の払戻しまたは譲渡。出資額と組合の財産の範囲で決まります。
- 役員退職慰労金。組合の規程と総会の決議によります。
- 監理事業以外の資産の譲渡。組合が持つ建物や設備などが対象になります。
どの経路をどう組み合わせるかは、組合の財産状況と定款、税務の扱いで変わります。ここは税理士と弁護士に確認する項目で、金額を先に決めて逆算する進め方は取りません。相談先の違いもあわせてご覧ください。
4. 職員と送出機関との契約は、法人に残る
法人が続くので、職員の雇用契約、送出機関との契約、組合員企業との関係はそのまま残ります。ここが事業譲渡との最大の違いです。ただし送出機関との契約は、育成就労の申込みの取次ぎに関する契約として結び直します。監理支援費以外の徴収を定めた契約は、許可の取消し事由になります。
5. 監理支援機関の許可は、新しい体制で申請する
理事を代えても、監理支援機関の許可は新たに申請します。ここで一つ、はっきり書いておくべき制約があります。監理支援機関の許可要件には、受入れ機関と密接な関係を持つ役職員を、その受入れ機関に対する業務に関わらせてはならないという定めがあります。組合員企業が自ら組合を引き継ぎ、自社の育成就労外国人を監理する形は、この要件に当たります。引き継ぐ側が受入れ企業そのものである場合は、体制の組み方を申請前に機構に確認する必要があります。
理事交代に総会の招集期間を入れると、9月30日までに間に合わせるには、今月中に動き始める必要があります。
決まってからでは、選べる手が減ります
日付を三つ並べます。2026年9月30日、機構が案内する施行日前申請の目安。2027年3月31日、施行日前申請の受付終了。2030年3月31日、技能実習が残る最後の目途。
9月30日を過ぎてから引き継ぎ先を探し始めると、引き受ける側は4月1日の許可を諦めるか、空白を覚悟するかを迫られ、条件は向こうに有利に傾きます。
逆に、いまなら三つの選び方が残っています。自分たちで申請する。法人ごと引き継ぐ。2030年3月まで技能実習の監理だけ続けて閉じる。どれを選ぶにしても、引き継ぎ先があるかどうかを知ったうえで決める方が、腹が据わります。
まず知る。決めるのは、そのあとで構いません。
特定技能の登録支援機関を株式会社で運営されている方は、仕組みが違います。株式譲渡で登録を持ったまま引き継げますが、2027年以降の更新要件が変わります。登録支援機関の側の整理は別の記事にまとめています。
京都で監理団体を営まれている方へ
つなぐパートナーズは、京都の中小企業の事業承継・M&Aを専門にしています。代表の吾郷が、1,000件以上のご相談をお受けしてきました。
協同組合の承継は、株式会社の売却とは手順も対価の形も違います。京都府内に32ある監理団体のうち31が協同組合です。組合員が数社、職員が2人という規模でも、お話を伺います。
ご相談は無料です。売り込みは一切いたしません。秘密は必ずお守りします。組合員企業や職員に伝わることはありません。
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閉めると決めていない段階でも構いません。
「引き継ぎ先があるのか」だけでも構いません。
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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
京都府を中心に、小規模M&A・事業承継のご相談に1,000件以上向き合ってきました。完全成功報酬で、ご相談から成約まで代表が直接伴走します。
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