和菓子屋の倒産が過去最多ペース|後継者がいない老舗が、閉店せずに暖簾と職人を引き継ぐ道【京都】

帝国データバンクによると、和菓子を製造する企業の倒産(負債1,000万円以上の法的整理)は、2026年1月から9月までで22件でした。前の年の同じ時期の19件を上回り、これまでで最も多かった2025年を超えるペースで推移しています。

目立つのは、長く続いてきた店です。2020年以降の倒産138件のうち、業歴100年以上の企業が24件、50年以上の企業が半数を占めました。

京都には、代々続く和菓子屋が数多くあります。「自分の代で閉めるしかないのか」と考え始めた店の主人に向けて、閉店を決める前に知っておきたいことと、暖簾と職人を残して引き継ぐ道を整理します。

和菓子屋が続けにくくなっている理由

帝国データバンクは、和菓子屋の倒産が増えている背景として、いくつかの理由を挙げています。

原材料の値上がり。小豆や砂糖、もち米といった主な原材料の値段が上がり続けているうえ、包装資材や光熱費、人件費も上がっています。

値上げのしにくさ。和菓子は、日々のお茶請けや地域の贈り物として買われることが多く、洋菓子に比べて値上げに抵抗を感じられやすいとされています。値上げに踏み切っても、来店の回数や売れる数が減ってしまう店もあります。

職人の高齢化。菓子職人が年を重ねて作れる量を保てなくなったり、主人の体調や職人の引退をきっかけに、続けられなくなったりする店もあります。

贈答の減少。冠婚葬祭の簡素化や手土産の減少で、贈り物としての需要も細っています。

どれも、店の努力だけではすぐに変えられないものです。そのうえで後を継ぐ人がいなければ、主人の代で区切りをつけるしかないと考えるのは自然なことです。

閉店を決める前に知っておきたいこと

店を閉めると、なくなるのは売り上げだけではありません。

長く一緒に働いてきた職人の仕事、毎年同じ時期に注文をくれる得意先との関係、そして店の名前、つまり暖簾です。いったん閉めた店の暖簾や職人の技を、後から取り戻すのは難しいことです。

また、菓子を作るための許可(菓子製造業の許可)は、店や工房の施設が基準に合っているかを確かめたうえで、施設ごとに受けているものです。店を閉めて廃業すると、保健所に廃業の届出を出し、許可はそこで終わります。もう一度始めるには、施設の基準に合わせて許可を取り直すことになります。

閉めると決める前に、店を閉めずに誰かに引き継いでもらう道があることを、知っておいてほしいと思います。

引き継いでもらうとき、値打ちになるもの

和菓子屋を引き継ぐ側から見て、値打ちになるのは、建物や機械だけではありません。

暖簾。長く続いてきた店の名前と、それに寄せられてきた信頼です。新しい店が一から同じ信頼を得るには、長い年月がかかります。

職人の技。店の味を作ってきた職人の技と、受け継いできた菓子の作り方です。

得意先。茶席や寺社、料亭など、決まった時期に決まった菓子を求めてくれるお付き合いです。京都の和菓子屋の中には、こうした長い関係を持つ店もあります。

帳簿の上では見えにくいものほど、引き継ぐ側にとっては、自分では作れない値打ちになります。

どんな相手が引き継ぐか

和菓子屋を引き継ぐ相手としては、次のような人が考えられます。

同じように和菓子を作っている店や会社。職人や得意先を引き継ぐことで、作れる量や扱う菓子を広げられます。

OEMやネット通販で売り上げを伸ばしている会社。帝国データバンクは、コンビニやスーパー向けの製造、ネット通販やふるさと納税で販路を広げ、業績を伸ばしている和菓子屋もあると伝えています。こうした会社にとって、職人の技と暖簾のある店は、手に入れたい力になります。

観光地で店を持ちたい事業者。訪日客の需要を取り込んでいる店もあります。京都で名の通った暖簾の店を構えたいと考える事業者も、相手として考えられます。

どの相手に引き継ぐかで、店の味や得意先との関係が、どこまでそのまま残るかが変わります。値段だけでなく、店をどう続けてくれるかを、相手と話しておくことをお勧めします。

暖簾を残して引き継ぐときの注意

店の名前を使い続けるとき。会社ではなく事業だけを引き継ぐ場合、引き継いだ側が前の会社の名前(商号)をそのまま使い続けると、前の会社の借金を払う責任を負うことがあります(会社法第22条)。個人で営んできた店を引き継ぐ場合も、同じ決まりが商法(第17条)にあります。店の屋号を使い続ける場合にも、この考え方が当てはまることがあります。前の会社の借金は引き受けないことを、きちんと手続きしておく必要があります。手続きの方法は、会社の引き継ぎの手続きを整理した記事で書いています。

菓子製造業の許可。2023年12月からは、事業を譲り受けた人が、譲渡の後に届け出ることで、菓子製造業の許可を引き継げるようになりました(食品衛生法第56条)。ただし、許可は施設ごとなので、工房や店を別の場所に移す場合は、新しく許可を取り直すことになります。業種ごとの許可の扱いは、別の記事で整理しています。

職人の技をどう引き継ぐか

和菓子屋の引き継ぎで一番難しいのは、職人の技の引き継ぎです。作り方を書き残しても、季節ごとの微妙な加減や、得意先ごとの好みまでは伝わりきりません。

そのため、引き継いだ後も、前の主人や職人が一定の期間店に残り、新しい作り手と一緒に菓子を作る形をとることがあります。どのくらいの期間、どんな立場で残るのかは、引き継ぎの条件として先に決めておく必要があります。

職人にとっても、店が続けば仕事が続きます。引き継ぎの話を職人にいつ、どう伝えるかも、早めに考えておいてください。

京都で和菓子屋の今後を考えている方へ

原材料の値上がりや職人の高齢化は、店の努力だけでは変えられません。それでも、閉める以外の道はあります。暖簾と職人の技、長い得意先との関係を残せる相手に、店を託すという道です。

当社は、京都府内の小さな店や会社の引き継ぎのご相談をお受けしています。「自分の代で閉めるしかないと思っていた」「引き継ぐ相手がいるのか分からない」という段階から、ご相談いただけます。

この記事の数字と出典

項目 数字 出典
和菓子店の倒産(2026年1〜9月) 22件(前年同期19件)。過去最多は2025年。対象=菓子製造(小売を含む)のうち和菓子を製造する企業・負債1,000万円以上・法的整理 帝国データバンク「『和菓子店』の倒産動向(2026年1-9月)」2026年10月3日
2020年以降の倒産の業歴 138件のうち業歴100年以上が24件(17.4%)、50年以上が半数 同上
菓子製造業の許可 菓子(パン及びあん類を含む)を製造する営業は、都道府県知事等の許可が必要。許可は営業の施設が基準に合うときに与えられる 食品衛生法施行令 第35条第11号/食品衛生法 第55条
廃業したとき 許可を受けた営業者は、廃業のときに施設の所在地の都道府県知事等へ届出書を出す 食品衛生法施行規則 第71条の2
事業譲渡での許可の承継 営業を譲り受けた者は、許可を受けた営業者の地位を承継し、遅滞なく届け出る 食品衛生法 第56条
前の店の名前を使い続ける場合 譲り受けた側も前の事業の債務を弁済する責任。遅滞なく責任を負わない旨を登記すれば負わない(双方から通知した相手に対しても同様) 会社法 第22条/商法 第17条(個人の店)

最終確認:2026年10月5日

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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
京都府を中心に、小規模M&A・事業承継のご相談に1,000件以上向き合ってきました。完全成功報酬で、ご相談から成約まで代表が直接伴走します。
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