「お店を閉めるしかないのか、それとも誰かに引き継いでもらえるのか。」
京都で飲食店を経営してきた方から、そういう相談を受けることが増えています。後継者がいない、体力的に続けられない、コロナ禍を経て収益が戻らない——理由はさまざまです。
この記事では、京都の飲食店経営者が売却・M&Aを検討するにあたって知っておくべきことを整理します。
飲食店をM&Aで売却するメリット
①廃業より高い「手取り」が得られる
廃業を選ぶと、厨房機器の処分費・内装の原状回復費・在庫の廃棄費が発生します。手元に残る金額はほぼゼロ、場合によってはマイナスになります。M&Aで売却すると、売却対価を受け取ることができます。小規模な飲食店でも数百万円〜数千万円の対価になるケースがあります。
②個人保証から解放される
設備投資・内装工事などで銀行借入をしている場合、個人保証を入れているケースが多いです。M&Aが成立すると、買い手の経営者が新たに保証人になる形で保証の解除交渉を進めます。長年首に縄をかけられていた感覚から解放されます。
③従業員の仕事が守られる
廃業すれば全員解雇になります。M&Aなら雇用を維持したまま引き継いでもらえます。長年一緒に働いてきたスタッフの生活を守ることができます。
④お店の味・文化が続く
廃業すれば、長年守ってきた味やレシピも終わりになります。M&Aなら次の経営者に引き継いでもらうことができます。「お店をなくしたくない」という思いを形にできます。
売却価格はどう決まるか
小規模M&Aでは一般的に「時価純資産+のれん(年倍法)」で価格を算定します。
時価純資産とは、資産(現金・厨房設備・什器等)から負債(借入金・買掛金等)を引いた実質的な財産価値です。借入が多ければ純資産は小さくなります。
のれん(年倍法)とは、事業を継続することで生まれる将来の収益価値です。飲食店では修正営業利益の1〜3倍程度が目安です。この倍率は以下の要素で決まります。
①立地・物件
駅近・繁華街・駐車場あり・観光エリアに近いほど評価が上がります。物件が居抜きでそのまま使える状態かどうかも重要です。
②固定客・リピーターの厚み
毎週・毎月通ってくれる常連客が多いほど、引き継ぎ後すぐに売上が立ちます。予約台帳・会員リスト・SNSフォロワー数が評価の参考になります。
③口コミ・ブランドの評価
食べログ・Googleマップの評価・メディア掲載歴・ミシュラン掲載実績などは、新規集客力として高く評価されます。京都は食に対する目が厳しく、評価の高い店舗は全国から買い手が集まります。
④厨房設備・居抜き内装の価値
厨房機器・エアコン・換気設備・内装の状態が評価されます。設備が新しく状態がよければ買い手の初期投資が減るため、倍率が上がります。また、居抜きで引き継げば、退去時の原状回復(内装をすべて撤去してスケルトンに戻すこと)の費用を負わずに済みます。飲食店は設備工事が多いぶん原状回復費用が高額になりがちで、これを避けられるのは売り手にとって大きな利点です。
「設備の分は取り戻したい」という、その気持ち
売却を考え始めた経営者から、よくうかがう言葉があります。「内装や厨房機器に、何百万円もかけてきた。その分は取り戻したい」。そう思うのは、ごく自然なことです。
ただ、買い手が本当に価値を感じるのは、設備そのものよりも、その店が築いてきたお客様と売上——営業権のほうです。設備は年々価値が下がっていきますが、繁盛している店の「稼ぐ力」は、買い手にとって何より魅力的だからです。投資した金額そのものではなく、その店が生み出している利益を起点に考えると、適正な価格が見えてきます。まずは決算書を拝見できれば、おおよその価格帯をお伝えできます。
物件と家賃の引き継ぎで、気をつけたいこと
飲食店の多くは、賃借物件で営業されています。物件ごと買い手に引き継ぐには、大家(貸主)の承諾が欠かせません。借主を勝手に変えることはできないため、買い手との交渉がまとまる段階で、貸主への打診が必要になります。
ここで見落とされがちなのが、家賃です。近年の物価上昇のなかでも、長いお付き合いから家賃を据え置いてきた、という物件は少なくありません。けれど、借主が変わるタイミングは、貸主にとって家賃を見直す好機でもあります。譲渡を機に家賃の改定を求められることは、決して珍しくありません。家賃が上がれば、買い手が引き継いだ後の利益が圧迫され、譲渡条件の交渉にも影響します。だからこそ、賃貸借契約の内容と、家賃が改定される可能性は、早い段階で確認しておくことをおすすめします。
従業員・パートの引き継ぎ
飲食店の売却でも、従業員やパートの雇用を継続することを、条件として交渉できます。長く働いてくれたスタッフが、引き続き同じ店で働けるよう取り決めることは可能です。
ただ、小規模な飲食店では、社長ご自身が調理や運営の中心を担っているケースがほとんどです。そのため、「特定のスタッフがいなければ店が回らない」という事情は、比較的起こりにくいといえます。一方で、複数の店舗を経営されている場合は、各店を任せている店長や料理長の存在が、事業を引き継ぐうえで重要になることもあります。
営業許可や在庫の扱い
飲食店営業の許可については、引き継ぎにあたって保健所で必要な手続きを取れば、難しいことはありません。ここで過度に心配される必要はありません。
食材や酒類、備品などの在庫は、引き渡しの時点で棚卸しを行い、譲渡代金とは別に精算するのが一般的です。
M&Aで想定される買い手
①飲食グループ・チェーン
エリア拡大・業態の多様化を目的とした飲食グループが最も多い買い手です。立地・設備・固定客をまとめて取得できるM&Aは、新規出店より低コストで展開できる手段として注目されています。
②独立希望の飲食人
修業を終えて独立を考えている料理人・スタッフが、固定客・内装・設備ごと引き継いで開業するケースがあります。ゼロから始めるより初期リスクが低いため、このニーズは増えています。
③異業種からの参入企業
不動産会社・ホテル運営会社・食品メーカーなどが、飲食機能の取得や観光需要への参入を目的にM&Aを検討するケースがあります。
京都の飲食店M&Aの特徴
京都は全国でも特に飲食店のM&Aニーズが高いエリアです。観光客・インバウンド需要の回復とともに、好立地・高評価の飲食店への買い手の引き合いが増えています。木屋町・先斗町・祇園・河原町などの繁華街エリアは特に需要が高く、閉店を検討している店舗に対して買い手から問い合わせが来るケースもあります。
また京都は京料理・懐石・町家レストランなど、ブランド価値の高い飲食店が集積しています。こうした店舗は首都圏・海外の投資家から特に注目されており、評価が高くなる傾向があります。食べログ百名店・ミシュラン掲載店はもちろん、地元に根づいた老舗も引き継ぎのニーズが高いカテゴリです。
売却のタイミング
黒字のうちに動くことが重要です。赤字が続くほど売却価格は下がり、買い手も限られてきます。「まだ売れる状態」のうちに相談することで、選択肢が広がります。
また売却を決めてから動くより、「価格だけ知りたい」という段階で一度相談してみることをお勧めします。実際の価格帯を知ることで、廃業・売却・継続のどれが最善かを判断できるようになります。相談は無料で、秘密は厳守します。従業員や取引先に知られることはありません。
よくある質問
Q:赤字でも売れますか?
A:立地・固定客・内装・設備が揃っていれば、赤字でも買い手がつくことがあります。赤字の原因が「経営のやり方」にある場合、買い手が改善できると判断すれば取得します。ただし赤字が続くほど選択肢は狭まるため、早めの相談が重要です。
Q:売ると決めていなくても相談できますか?
A:もちろんです。「価格だけ知りたい」「廃業と売却どちらが得か知りたい」という段階でのご相談を歓迎します。財務諸表を見せていただければ、おおよその価格帯をお伝えできます。
Q:個人保証はM&Aで解除できますか?
A:株式譲渡によるM&Aでは、売り手と買い手が一緒に金融機関へ出向き、保証解除の内諾を得ることが重要です。銀行が買い手の信用力を認めれば、売り手の保証は解除されます。
京都で飲食店を売却する際に知っておきたいこと
京都の飲食店売却には、他エリアとは異なる特徴があります。まず、木屋町・祇園・四条河原町などの繁華街は物件の希少性が高く、立地だけで売却価格に大きなプレミアムがつくケースがあります。同じ売上規模でも、郊外の飲食店より高い評価を受けることがあります。
また京都は「のれん」の価値が高い地域です。創業年数・口コミ評価・メディア掲載実績は、京都ブランドと組み合わさることで首都圏・海外の買い手から高く評価されます。食べログ百名店やミシュラン掲載店はもちろん、地元客に長年愛される店も同様です。
さらに、観光・インバウンド需要の回復とともに飲食事業への参入を目指す企業・投資家の関心が高まっています。「売りたい」と思ったときに買い手候補が見つかりやすい市場環境が続いています。まずは秘密厳守で、現在の価値だけでも確認してみてください。
売却価格を上げるために今からできること
- 黒字の状態を維持する:赤字になってからでは選択肢が大幅に狭まります。売上が安定している今が動きどきです
- 口コミ評価を上げる:食べログ・Googleマップの評価は売却価格に直結します。返信・改善を継続しておくと評価が上がります
- 固定客との関係を強化する:LINE・メルマガ・予約台帳など、顧客基盤が可視化されているほど買い手に伝わりやすくなります
- 決算書を整理する:役員報酬・不要な経費を見直し、利益が正しく反映されるようにしておきます
- 設備を適切に維持する:厨房機器・空調・排気設備の状態がよければ買い手の評価が上がります
Q:売却にかかる期間はどのくらいですか?
A:小規模な飲食店の場合、相談から成約まで3〜6ヶ月が目安です。買い手が見つかりやすい立地・業態の場合はより早く進むこともあります。売却を決めてから動くと焦りが出るため、余裕のあるうちに相談を始めることをお勧めします。
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まずはご相談ください
「売ると決めたわけではない」という段階でも構いません。
会社がいくらになるのか、廃業と売却どちらが得なのか——そういった入口でも、お話をお聞きします。
一人で抱えているより、一度ご相談いただく方が、気持ちが楽になることがあります。
ご相談を、代表の吾郷が直接お受けします。
監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
京都府を中心に、小規模M&A・事業承継のご相談に1,000件以上向き合ってきました。完全成功報酬で、ご相談から成約まで代表が直接伴走します。
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