リネンサプライの廃業と引き継ぎ|京都のホテルや旅館に納める洗濯工場を、取引先ごと残す道【京都】

京都市内で旅館業の許可を受けている宿泊施設は、2026年3月末で3,810施設、客室は6万758室ありました。そのシーツやタオルを洗って届け、使い終わったら回収してまた洗う。リネンサプライは、京都の宿泊の仕事を裏で支える商売です。

京都府内のリネンサプライ業の事業所は、2021年の経済センサスで89、働く人は2,598人でした(うち京都市内が39事業所)。1事業所あたり約29人と、町のクリーニング店よりずっと大きな工場です。

この記事では、京都でホテルや旅館にリネンを納めてきた会社の経営者に向けて、工場を閉めるときに要ることと、取引先ごと引き継いでもらう道を整理します。

ホテルとの取引と工場がそろって成り立つ商売

リネンサプライは、洗濯の工場があるだけでは成り立ちません。毎日決まった量のリネンを納めるホテルや旅館との取引、大量のリネンを洗って仕上げる設備と人、集めて届ける配送の段取り。この3つがそろって、はじめて仕事が回ります。

新しくこの商売を始めようとすれば、工場を建て、設備をそろえ、人を集め、ホテルや旅館に一軒ずつ取引をお願いすることになります。今ある会社を引き継げば、そのすべてが最初からそろっています。引き継ぐ側から見た値打ちは、ここにあります。

廃業するときに要る届出

工場を閉めるときは、いくつかの届出が要ります。クリーニング所を廃止したときは、速やかに保健所へ届け出ます(クリーニング業法第5条)。

洗濯の洗浄施設は、水質汚濁防止法の特定施設にあたります。排水を川などに流している工場は府(京都市内は市)へ、下水道に流している工場は下水道の管理者へ、施設をやめた日から30日以内に届け出ます(水質汚濁防止法第10条・下水道法第12条の7)。

テトラクロロエチレンなどの有害物質を使う洗浄施設を設けていた工場では、その施設をやめたとき、土地の持ち主など(施設を設けていた人)が、国や府が指定した調査機関に土壌を調べてもらい、120日以内に報告する義務があります(土壌汚染対策法第3条)。報告先は、京都市内なら京都市長、それ以外は京都府知事です。対象になるのは、こうした施設を設けていた工場だけですが、当てはまる場合は、調査や対応の費用も閉めるときの費用に入ってきます。

そして、取引先のホテルや旅館は、明日からのリネンをどこかで手当てしなければなりません。閉める時期は、取引先に迷惑がかからないよう、早めに伝える必要があります。

2023年12月から、事業譲渡でも工場を引き継げる

リネンサプライの工場は、クリーニング業法のクリーニング所です。法律は、貸したものを回収して洗い、また貸すことを繰り返す仕事も、クリーニングに含めています(第2条)。

以前は、事業を譲った場合、譲り受けた人がクリーニング所を新しく開設し直すしかありませんでした。2023年12月13日からは、事業を譲り受けた人が遅滞なく届け出れば、営業者の地位を引き継げるようになりました(第5条の3)。新しく開設の届出をしたり、使用前の検査を受け直したりする必要はありません。

工場を止めずに次の会社へ移せるので、取引先のホテルや旅館に納めるリネンも途切れずに済みます。

クリーニング師が残るか

クリーニング所には、それぞれ1人以上のクリーニング師を置かなければなりません(クリーニング業法第4条)。

引き継ぎの話を進めるときは、今のクリーニング師が、引き継いだ後も工場に残れるかを早めに確かめておく必要があります。資格を持つ人が辞めてしまうと、引き継いだ会社が別の資格者を用意しなければなりません。

工場の土地や建物と、届出の引き継ぎ

会社ごと引き継いでもらう場合(株式譲渡)は、クリーニング所を届け出ている会社がそのまま残るので、届出もそのまま残ります。ただ、クリーニング師や構造設備など、届け出た中身が変われば、変更の届出が要ります(第5条)。

事業だけを譲る場合は、先に書いたとおり、譲り受けた人の届出で地位を引き継げます。どちらの形にするかは、相手と話し合って決めることなので、先に決めておく必要はありません。それより先に確かめておきたいのは、工場の土地や建物が会社のものか、社長個人のものか、借りているものかです。それによって、引き継ぎ方が変わります。

引き継ぐ相手として考えられる会社

同じようにリネンサプライを営む会社なら、工場と取引先を引き継ぐことで、扱う量や納める地域を広げられます。

ホテルや旅館に向けて、ユニフォームや寝具、アメニティなどを扱う会社にとっても、リネンの工場と取引先は、自分たちの仕事と組み合わせやすい力になります。町のクリーニングを営む会社が、仕事の幅を広げるために引き継ぐことも考えられます。

話を進めるときは、毎日のリネンを途切れさせずに、取引先への納品を続けてもらえるかを、最初に確かめてください。

京都でリネンの工場の今後を考えている方へ

京都市の宿泊施設は、2026年8月末の速報で3,874施設と、3月末から64施設増えています。納め先のホテルや旅館があるうちに、工場と取引先をまとめて引き継いでもらう道を考えておく値打ちがあります。

当社は、京都府内の会社の引き継ぎのご相談をお受けしています。工場を閉める届出を出す前に、ご相談ください。取引先ごと引き継いでもらえる相手がいるかどうか、一緒に確かめます。

この記事の数字と出典

項目 数字 出典
京都市の宿泊施設 2026年3月末 3,810施設・6万758室(旅館・ホテル641施設・4万2,554室、簡易宿所3,169施設・1万8,204室)。2026年8月末(速報)3,874施設。旅館業法の許可施設 京都市「宿泊施設数の推移」(令和8年8月末日現在 速報値)
リネンサプライ業の事業所(京都府) 89事業所・2,598人(うち京都市39事業所・1,071人)。2021年6月1日時点・全事業所(個人経営と法人を含む)・経済センサスの分類78B 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」第9-1A表・第9-1B表
クリーニング業法 クリーニングには貸与・回収・洗濯を繰り返す営業を含む(第2条)。クリーニング所ごとにクリーニング師1人以上(第4条)。届出事項の変更・廃止は速やかに届出(第5条第3項)。営業の譲渡・相続・合併・分割で地位を承継し、遅滞なく届出(第5条の3・譲渡は2023年12月13日から) クリーニング業法
承継したときの手続 地位を承継した場合、新規の開設届・譲渡人の廃止届・使用前の検査は不要 厚生労働省 リーフレット(生活衛生関係営業の事業譲渡による営業者の地位の承継)
洗濯の洗浄施設の廃止 洗濯業の用に供する洗浄施設は特定施設。公共用水域に排出する工場は水質汚濁防止法、公共下水道を使う工場は下水道法の届出。使用の廃止は30日以内に届出 水質汚濁防止法 第10条・同法施行令 別表第一 第67号/下水道法 第12条の7
有害物質使用特定施設の廃止と土壌調査 施設を設置していた土地の所有者等が、指定調査機関に調査させ120日以内に報告 土壌汚染対策法 第3条・同法施行規則 第1条

最終確認:2026年10月9日

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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
京都府を中心に、小規模M&A・事業承継のご相談に1,000件以上向き合ってきました。完全成功報酬で、ご相談から成約まで代表が直接伴走します。
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