クリーニング店の廃業vs M&A|溶剤処分費用と売却のどちらが得か【京都】

クリーニング店を長年経営してきた。地域の常連客に支えられ、取次店とのネットワークも築いてきた。しかし、自分の年齢や機械の老朽化、取次先の減少を考えると、将来の見通しが立たない。後継者もいない。そんな京都のクリーニング店経営者に、読んでいただきたい記事です。

クリーニング店を廃業する際には、溶剤や機器の処分に想像以上の費用がかかります。一方、長年通ってくれる常連客や、築き上げてきた取次店ネットワークは、買い手に評価される資産です。廃業を決める前に、一度だけ比較してみてください。


廃業とM&A、何が違うか

廃業M&A
お客さまへの影響別のクリーニング店探しが必要そのまま利用し続けられる
売却対価なし(処分費用が発生)あり(顧客・取次ネットワークとして評価)
従業員の雇用全員解雇継続雇用が前提
溶剤・機器処分費用100万〜300万円が必要不要(資産として評価)
取次店ネットワーク失われる買い手に引き継がれる

クリーニング店の廃業にかかる費用の目安

  • ドライクリーニング機・洗濯機・乾燥機の撤去:大型機器で50万〜150万円
  • 溶剤(パークロロエチレン等)の処分:特別管理産業廃棄物扱いで30万〜80万円
  • 店舗テナントの原状回復:給排水・換気設備の復旧で30万〜100万円
  • 預かり品(未引き取り品)の対応:返却・保管延長に伴う事務負担
  • 顧問税理士への報酬:清算手続きで20万〜50万円
  • 従業員への退職金:規模・在籍年数により数百万円以上

合計の目安: 100万〜300万円

クリーニング用の溶剤は特別管理産業廃棄物にあたるため、適正に処理したことの証明が必要です。また、お客さまから預かっている衣類も、最後までしっかり対応する必要があります。

閉めるときには、届出もあります。クリーニング所を廃止したときは、速やかに保健所へ届け出ます(クリーニング業法第5条第3項)。

洗濯に使う洗浄施設は、水質汚濁防止法の特定施設にあたります。排水を川などに流していた店は同法、下水道に流していた店は下水道法に基づき、施設の使用をやめた日から30日以内に届け出ます。

ドライクリーニングでテトラクロロエチレンなどの有害物質を使う洗浄施設を設けていた店では、もう一つ確かめることがあります。

その施設をやめたとき、土地の持ち主など(施設を設けていた人)は、国や府が指定した調査機関に土壌を調べてもらい、120日以内に報告する義務があります(土壌汚染対策法第3条)。報告先は、京都市内なら京都市長、それ以外は京都府知事です。引き続き店舗や工場として使う場合などは、確認を受けて調査を先に延ばせることもあります。

当てはまる店では、調査費用や、汚染が見つかったときの対応にかかる費用も、閉めるときの費用として考えておく必要があります。


クリーニング店がM&Aで評価される理由

クリーニング師免許と許認可

クリーニング所は、開くときに保健所へ届け出る仕組みで、許可制ではありません。また、クリーニング所ごとにクリーニング師を1人以上置く決まりがあります。クリーニング師の免許は本人のものなので、譲ることはできません(クリーニング業法第4条)。

一方、2023年12月13日からは、店の事業を譲り受けた人が遅滞なく届け出れば、営業者の地位を引き継げるようになりました。新しく開設の届出をしたり、使用前の検査を受け直したりする必要はありません(同法第5条の3)。今のクリーニング師に残ってもらえれば、買い手は開業の手間をかけずに営業を続けられます。

取次店ネットワークの価値

クリーニング業の価値は、工場だけでなく「取次店ネットワーク」にあります。

近隣の個人商店や商業施設内の取次店から、毎日衣類が集まってくる仕組みは、長年の営業活動によって築かれた資産です。同じネットワークをゼロからつくるのは極めて困難で、買い手はこの取次店網を高く評価します。

集配サービスのノウハウ

集配サービスを自前で手がけるクリーニング店には、配送ルートや時間帯、顧客との信頼関係といったノウハウがあります。

特に高齢者世帯への集配需要は、今後も増加が見込まれています。このサービス体制をそのまま引き継げる既存店舗の価値は高まっています。配送スタッフの熟練度も、そのまま価値として評価されます。

常連顧客の来店基盤

地域で長年営業してきたクリーニング店には、常連顧客の来店基盤があります。「このお店だから頼む」という信頼は、新しく参入した事業者が一朝一夕に築けるものではありません。

衣替えシーズンのリピート需要や、布団クリーニングなど特殊案件の定期需要は、承継後も続く安定収益源です。


M&Aで想定される買い手

  • クリーニングチェーン(FC展開・直営展開を進める事業者)
  • 同業のクリーニング店(工場や取次網の拡充を目指す事業者)
  • クリーニング工場を持つ大手(店舗網の拡大を進める企業)
  • 独立開業を目指す元従業員・独立希望者

京都のクリーニング店M&Aの動向

京都府内のクリーニング業界は、大手チェーンの出店と地域密着型の個人店が混在するマーケットです。京都市内の商業施設のテナントやマンション下のテナント、郊外のロードサイド型店舗など、多様な業態が共存しています。

高齢化による個人店の閉店が続く一方、大手チェーンは出店を続けており、既存の取次店網や工場機能を承継したいチェーン企業からの引き合いが見られます。特に、取次店を複数抱える中小業者や、集配ネットワークを持つ事業者は、買い手に評価される対象です。


いつ動けばいいか

クリーニング店のM&Aは、取次店との関係が続いているうち、主要なオペレーター従業員が在籍しているうちに動くのが理想です。

取次店の減少や工場機械の老朽化、顧客離れが表面化してからでは、評価は大きく下がります。

機械の更新投資を控えて迷っているとき、体力的な限界を感じたとき、後継者がいないことがはっきりしたとき。このいずれかが訪れたら、一度相談してみてください。相談は無料で、売ると決めていなくても構いません。


廃業を選ぶ前に検討してほしいこと

クリーニング店の廃業は、機器撤去・溶剤処分・原状回復で100万〜300万円の費用が発生します。

加えて、長年お世話になった取次店や集配先への連絡、お預かり品の返却、お客さまからの問い合わせ対応など、事務負担は小さくありません。従業員さんの再就職支援も必要です。

一方、M&Aなら、お客さまは引き続きクリーニングを依頼でき、取次店ネットワークも途切れず、従業員さんの雇用も守られます。ご自身は売却対価を引退後の生活資金に充てられます。廃業とM&A、両方を並べて比較する価値は十分にあります。


よくある質問

Q. 小規模な個人店で、従業員も私と妻の2人だけです。それでも買い手は見つかりますか?
A. 見つかるケースは多くあります。規模の大小より、「取次店ネットワーク」「立地」「顧客基盤」が評価されます。小規模店舗を複数まとめて取得するクリーニングチェーンもあり、小規模だからといって候補から外れることはありません。

Q. 工場機器が古くなっています。M&Aで不利になりますか?
A. 大きなマイナスにはなりません。買い手は自社の運営方針に合わせて機器を入れ替えるケースが多く、機器の状態よりも取次店網と顧客基盤を重視します。ただし、稼働できる状態で引き渡せることは最低限の条件になります。

Q. 取次店の店主と長い付き合いで、書面契約がない場合もあります。これは問題になりますか?
A. 必ずしも問題にはなりません。取引の実態は、請求書や入金履歴、受注記録などで示せます。M&Aの準備段階で、書面にできる範囲で整理しておくと、承継がより円滑に進みます。


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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
京都府を中心に、小規模M&A・事業承継のご相談に1,000件以上向き合ってきました。完全成功報酬で、ご相談から成約まで代表が直接伴走します。
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