門前薬局の立地依存減算|京都市の調剤薬局が、廃業・事業譲渡の前に確かめたいこと【京都】

2026年6月1日から、条件に当てはまる門前薬局は、処方箋を受け付けるたびに調剤基本料から15点を引かれるようになりました。「門前薬局等立地依存減算」という仕組みで、対象は6月1日以降に保険薬局の指定を受けた薬局です。京都市はこの減算の「都市部」に入っています。

5月31日の時点ですでに指定を受けていた薬局には、当面の間かかりません。開設者が代わって指定を受け直した場合も、国の疑義解釈では「該当しない」とされています。

後を継ぐ人がいないまま廃業を考え始めた薬局にとっては、廃止届を出すか、事業譲渡で引き継いでもらうかで、その場所の扱いが変わるということです。京都府内の薬局は1,214施設あります(2024年度末)。

立地依存減算は、どんな薬局にかかるのか

対象は2つの型に分かれます。

1つは門前型です。特別区か政令指定都市にあって500メートル以内にほかの薬局があり、受け付ける処方箋のうち特定の医療機関からのものが85%を超えている薬局が、まず候補になります。そのうえで、200床以上の病院の敷地から100メートル以内で周りにほかの薬局が2つ以上ある、または周囲50メートル以内にほかの薬局が2つ以上ある、といった条件のどれかに当てはまると対象です。

京都府内でいえば、門前型の地域の条件に当たるのは京都市だけです。宇治市や亀岡市など京都市の外にある薬局は、門前型には当たりません。

もう1つは医療モール型で、処方箋の85%超が特定の医療機関からのもので、医療機関と同じ建物や同じ敷地にある薬局です。こちらは地域を問いません。

引かれる15点は、調剤基本料1(47点)の約3割です。1点は10円なので、処方箋1枚あたり150円になります。1日60枚を受け付ける薬局なら、月に25日開けて約22万円です(計算例)。

2026年5月31日に指定を受けていた薬局には、当面かからない

国の通知には「令和8年5月31日において現に保険指定を受けている保険薬局については、当面の間、門前薬局等立地依存減算に該当しないものとする」とあります。「当面の間」がいつまでかは、書かれていません。

開設者が代わっても、減算がかからない場合がある

疑義解釈(その2・問9)は、5月31日以前に指定を受けていた薬局が、移転、法人化、開設者の交代で指定を受け直し、指定日が6月1日以降になった場合について、「門前薬局等立地依存減算には該当しない」と答えています。

この「開設者の交代」に、親族でも従業員でもない第三者への事業譲渡が入るかどうかは、はっきり書かれていません。言葉の上では入るように読めますが、事業譲渡を進める前に、近畿厚生局に確かめておくのが確実です。

廃業すると、その場所に次に開く薬局は「新しい薬局」になる

今の薬局が廃止届を出して閉め、しばらくしてから同じ場所に別の人が薬局を開いたとします。その薬局は6月1日以降に新しく指定を受ける薬局なので、条件に当てはまれば減算の対象になります。開いてすぐではなく、最初の3か月の処方箋集中率で判定され、その2か月後から引かれる仕組みです。

同じ場所、同じ患者さんでも、いったん閉めてから開き直すのと、事業譲渡で引き継ぐのとでは、問9の扱いを受けられるかどうかが違ってきます。

事業譲渡のときの、開設許可と保険薬局の指定

薬局を開くには、京都市内なら京都市長、それ以外は京都府知事の許可が要ります。許可は6年ごとの更新です。薬機法には、薬局の許可を譲り受けた人に引き継ぐ規定がないので、事業を譲り受けた人は自分で許可を取り直します。業種ごとに、事業譲渡で許可を引き継げるかどうかは別の記事にまとめています。

保険薬局の指定も、開設者が申請して受けるものです。通常は申請した月の翌月1日が指定日なので、そのままでは、前の薬局をやめてから新しい指定が始まるまで、保険で調剤できない日が出てしまいます。

これを避けるのが遡及指定です。場所を変えずに開設者だけが代わる場合、地方社会保険医療協議会で認められれば、前の薬局を廃止した日の同じ日か翌日にさかのぼって指定を受けられます。主な条件は次のとおりです。

  • 調剤録を引き継ぎ、前の薬局の患者さんへの調剤を続けること
  • 管理薬剤師が同じ人であること
  • 原則として、前の開設者を除く職員を全員引き続き雇うこと
  • 常勤の薬剤師のおおむね5割以上が、常勤のまま残ること

働いている人の側から見れば、今の職員がそのまま働き続けることが、遡及指定の前提になっているということです。

この条件を満たしていれば、厚生局への事前の届出は要りません。移転と開設者の交代を同時に行う場合は扱いが変わり、原則として3か月前までに予定届出書を出して相談することになります。遡及指定が受けられず指定日が空くと、問9の扱いがどうなるかもはっきりしなくなるので、日程は条件を確かめてから決めてください。

薬局を会社で営んでいて、会社ごと引き継いでもらう形(株式譲渡)なら、開設者は変わらないので、許可も指定もそのまま続くと考えられます。ただ、これをはっきり書いた国の資料は見当たらないので、こちらも近畿厚生局に確かめてください。どちらの形にするかは相手と話し合って決めることなので、先に決めておく必要はありません。

引き継ぐ相手として考えられる人

近くで薬局を営んでいる人にとっては、門前の場所と、通ってくる患者さんを引き継げる機会です。新しく出せば減算がかかりうる場所なら、なおさらです。

薬局のグループが店を増やすために引き継ぐこともあれば、勤めている薬剤師が独立して引き継ぐこともあります。遡及指定には管理薬剤師が同じ人であることが条件に入っているので、今の管理薬剤師が残ってくれるかどうかは、相手を探す前に確かめておきたいところです。

いくらで引き継いでもらえるかの目安は、調剤薬局の売却価格の相場にまとめています。

京都で調剤薬局の今後を考えている方へ

廃止届を出してしまうと、その場所で次に開く薬局は、減算がかかりうる新しい薬局になります。

廃止届を出す前にご相談ください。引き継げる相手がいるかどうかを、遡及指定の段取りとあわせて一緒に確かめます。

この記事の数字と出典

項目 数字 出典
門前薬局等立地依存減算 処方箋の受付1回につき、調剤基本料から15点を減算(調剤基本料1は47点)。1点の単価は10円 調剤報酬点数表 区分00 注15/診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)第3号
対象になる薬局 指定日が2026年6月1日以降で、門前型=特別区又は政令指定都市にあり500m以内に他の保険薬局・処方箋集中率85%超・200床以上の病院から100m以内に他の薬局2以上/周囲50m以内に他の薬局2以上 等のいずれか。医療モール型=集中率85%超かつ保険医療機関と同一の敷地又は建物 厚生労働省 調剤基本料の届出様式(門前薬局等立地依存減算の該当性の欄)
経過措置 「令和8年5月31日において現に保険指定を受けている保険薬局については、当面の間、門前薬局等立地依存減算に該当しないものとする」 保医発0305第8号 別添 第95の3
移転・法人化・開設者の交代 5月31日以前に指定を受けた薬局が改めて指定を受け、指定日が6月1日以降となった場合も「該当しない」(問9)。新規開設は開設月の翌月から3か月の処方箋集中率で判定し、最終月の翌々月1日から適用(問8) 疑義解釈資料の送付について(その2)(2026年4月)
遡及指定 通常は申請の翌月1日が指定日。所在地を移さず開設者のみ変更する場合、地方社会保険医療協議会が認めれば旧薬局の廃止日の原則同日又は翌日付で指定。要件=調剤録の引継ぎ・患者への調剤継続・管理薬剤師が同一・原則として開設者を除く全職員の継続雇用・常勤薬剤師の概ね5割以上の継続雇用など(この場合は予定届出による事前相談は不要)。移転と開設者変更を同時に行う場合は原則3か月前までに予定届出 保医発0605第2号(2026年6月5日)
薬局の開設許可 都道府県知事(保健所を設置する市は市長)の許可。6年ごとの更新。薬局開設者の地位を承継する規定はない 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第4条
保険薬局の指定 厚生労働大臣の指定(権限は地方厚生局長に委任)。開設者の申請により行う 健康保険法 第63条第3項・第65条・第205条
京都府の薬局数 1,214施設(2024年度末) 厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」

最終確認:2026年10月10日

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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
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