2020年4月1日より前から営業している小さな居酒屋やバー、スナックは、健康増進法の経過措置によって、店の中でたばこを吸える店として営業できます。京都府の案内では、この経過措置の期間は定められていません。ただし、店を誰にどの形で引き継ぐかによって、経過措置が続く場合と、外れて新しく開いた店の扱いになる場合があります。
国の専門委員会は2026年7月のとりまとめで、3年後をめどに、この特例を続けることも含めて改めて検討してはどうか、としています。同じとりまとめには、経営する人が事業の引き継ぎなどで変わったときの扱いが十分に知られていないのではないか、という委員会の意見も載っています。
喫煙できる店のままでいられる条件
経過措置の対象は、次の3つの条件をすべて満たす店です(京都市の案内)。
- 2020年4月1日の時点で営業していた
- 資本金の額または出資の総額が5,000万円以下(個人の店も対象)
- 客席の広さが100平方メートル以下
資本金と客席の広さの条件は、法律が始まった後も満たし続ける必要があり、満たさなくなった時点で経過措置の対象から外れます(厚生労働省のQ&A 問5-1-3)。引き継いだ相手が資本金を5,000万円より多くしたり、客席を100平方メートルより広げたりすると、その店は外れます。
引き継ぎ方で、喫煙できるかどうかが変わる
厚生労働省のQ&A(問5-1-2)は、店を営む人が変わったときに経過措置が続くか外れるかを、次のように分けています。
| 引き継ぎ方 | 経過措置 |
|---|---|
| 会社はそのままで、代表者や店長が替わる | 続く |
| 会社の合併・分割で、同じ業態の店を引き継ぐ | 続く |
| 個人の店を、相続で同じ業態のまま継ぐ | 続く |
| 個人の店を、相続人や1年以上勤めた従業員が同じ業態で継ぐ | 続く |
| 個人の店を、それ以外の人が継ぐ | 外れる(新しく開いた店の扱い) |
| 会社の店を、別の会社に事業として譲る | 外れる(同上) |
会社ごと引き継いでもらって代表者が替わったときは、京都市に届け出た内容(会社の場合は代表者の名前を含む)が変わるので、京都市の受動喫煙防止対策の相談・届出の窓口に変更を届け出ます。
大きな会社の子会社になると、外れることがある
法律は、資本金が5,000万円を超える会社を「大規模会社」と呼んでいます。資本金が5,000万円以下の会社でも、1つの大規模会社が株の半分以上を持つ会社と、大規模会社が合わせて株の3分の2以上を持つ会社は、経過措置の対象から除かれます(健康増進法の一部を改正する法律 附則第2条)。大規模会社に会社ごと買ってもらい、その子会社として店を続ける形では、店を営む会社が同じままでも、この条件で外れることがあります。
店を直したり、許可を取り直したりすると外れる
店を移す、建て替える、客席の部分を壁や柱から造り直す、といった大きな改装をすると、経過措置から外れます。災害や土地区画整理など、法律で決まった理由で移って同じ業態で再開する場合は外れません。壁紙の張り替えや、店の中の配置、調理の設備の入れ替えのように、壁・柱・床・はり・屋根・階段に手を入れない工事も当たりません(厚生労働省のQ&A 問5-1-2)。
風俗営業の許可を新しく取ったり、やめたりした場合も外れます。Q&Aは、居酒屋がキャバレーになった場合を例に挙げています。
長く勤めた従業員が継ぐときの分かれ目
個人で営む店なら、1年以上勤めた従業員が同じ業態で継げば、経過措置は続きます。
会社で営む店は、従業員がどの形で継ぐかで分かれます。従業員が会社の株を買って会社ごと引き継ぐなら、店を営む会社は変わりません。従業員が新しく自分の会社を作り、その会社に店を譲り受ける形は、別の会社への事業の譲渡に当たり、外れます。
引き継ぐ相手が確かめること
相手が会社ごと引き継ぐつもりか、自分の会社や個人で店を譲り受けるつもりかで、喫煙できるかどうかが変わります。値段の話に入る前に、どちらの形を考えているかを相手に聞いておきます。
京都府の案内では、客席の床面積が分かる資料(店の図面など)と、会社の場合は資本金が分かる資料(登記や決算書など)を、店で保存しておくことになっています。引き継ぐ相手は、これらと京都市への届出の内容を見て、条件を満たしているかを確かめます。
京都で居酒屋・バー・スナックの今後を考えている方へ
店を譲る相手と話を始める前にご相談ください。京都市への届出の内容と客席の広さを伺い、話に出ている引き継ぎ方で経過措置が続くかを一緒に確かめます。
この記事の数字と出典
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 経過措置の対象(京都市) | 2020年4月1日時点で営業・資本金の額または出資の総額が5千万円以下・客席面積100平方メートル以下(3つすべて) | 京都市「受動喫煙を防止しましょう!」(2026年4月28日更新) |
| 経過措置の期間 | 経過措置の期間は定められていない | 京都府「既存小規模飲食店への経過措置と届出」(2026年3月5日更新) |
| 引き継いだときの扱い | 代表者・店長の変更、相続、合併・分割、相続人や1年以上勤めた従業員が同じ業態で承継=続く。相続人等以外の承継、別法人への事業譲渡=新規店舗扱い | 厚生労働省「改正健康増進法の施行に関するQ&A」問5-1-2(最終改正 令和元年6月28日) |
| 店の同一性 | 移転・建て替え・客室部分の改築・大規模修繕は新規店舗扱い(法律上の事由による移転等は除く)。主要構造部を変えない工事は当たらない。風営法の許可の新規取得・廃止も新規店舗扱い | 同 Q&A 問5-1-2 |
| 条件を満たし続けること | 資本金5,000万円以下・客席面積100㎡以下は施行後も満たしている必要がある | 同 Q&A 問5-1-3 |
| 大規模会社の子会社 | 大規模会社=資本金又は出資の総額が5千万円を超える会社。5千万円以下でも、一の大規模会社が発行済株式等の二分の一以上を有する会社、大規模会社が三分の二以上を有する会社が営む施設は除く | 健康増進法の一部を改正する法律(平成30年法律第78号)附則第2条第2項 |
| 考え方(国の説明) | 経営規模は売上げではなく資本金と面積で判断。資本金5,000万円以下(一の大規模会社が二分の一以上を有する会社等を除く)・客席面積100㎡以下 | 厚生労働省「既存特定飲食提供施設の考え方及び範囲について」 |
| 国の見直し | 3年後を目途に、特例措置の継続も含めた検討を改めて行うこととしてはどうか(案)。承継等で経営主体が変わった場合の扱いの周知が十分でないという意見 | 厚生科学審議会 受動喫煙対策専門委員会「受動喫煙対策の見直しに関する議論のとりまとめ」(令和8年7月) |
| 届出の変更(京都市) | 店舗の名称・所在地、管理権原者(法人は名称・所在地・代表者の名前)が変わったとき、喫煙可能室を廃止したときは届出 | 京都市「受動喫煙を防止しましょう!」 |
| 店で保存する資料 | 客席部分の床面積に係る資料(店舗図面等)。会社経営の場合は資本金・出資総額が分かる資料(登記・決算書等) | 京都府「既存小規模飲食店への経過措置と届出」 |
最終確認:2026年10月22日
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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
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