印刷会社を売却したい。でも、自社がどのくらいで売れるのか、価格の目安がわからない——。このページでは、印刷業のM&A売却価格がどう決まるか、算定の考え方を参考例とともに解説します。
基本:時価純資産+年倍法
小規模な印刷会社のM&Aでは、売却価格は「時価純資産+のれん(営業利益の2〜3年分)」で算定されることがほとんどです。売上規模だけで相場が決まるわけではなく、各社の財産状況と収益性、そして印刷業特有の設備・取引先・技術で金額が大きく変わります。
時価純資産の考え方
貸借対照表の純資産を、時価ベースで評価し直した金額です。印刷業では以下の項目が重要になります。
- 印刷機・加工設備の時価評価:オフセット印刷機・デジタル印刷機・CTP(製版)設備・製本機・断裁機など。稼働年数と中古市場価値で評価
- 工場・事務所の不動産:自己所有の場合は含み益を加算
- 紙・インキ在庫:特殊紙・特色インキなどは時価評価が困難なため精査が必要
- 製版データ・版下資産:顧客から預かっている版下・データの価値(帰属確認が必要)
- リース残債:印刷機・加工設備のリース契約は簿外負債として控除
- 退職給付引当金:職人の長期勤続が多い業種で、引当金が大きい場合あり
のれん(年倍法)の考え方
事業を続けることで生まれる将来の収益価値です。直近の営業利益の2〜3倍を目安に算定することが多く、印刷業の場合は以下の要素で倍率が変動します。
- パッケージ・ラベル・シール・特殊印刷など付加価値の高い分野に強みがあるか
- デザイン会社・広告代理店・出版社など継続取引先の安定度
- 自治体・寺社・観光施設など京都特有の受注実績
- デジタル印刷・オンデマンド印刷・小ロット対応など時代変化への対応力
- 職人・オペレーターの技術水準と若手育成状況
印刷業の売却価格の参考例
【例1】小規模:オフセット1台・従業員3〜5名
営業利益500万円・時価純資産1,500万円の小規模印刷会社の場合:
株価の目安は「1,500万円 + 500万円 × 2〜3年 = 2,500万〜3,000万円」程度になります。
【例2】中規模:オフセット複数台・従業員10名前後
営業利益1,000万円・時価純資産3,500万円の中規模印刷会社の場合:
株価の目安は「3,500万円 + 1,000万円 × 2〜3年 = 5,500万〜6,500万円」程度になります。
【例3】特殊印刷・パッケージに強み
パッケージ印刷・ラベル印刷・シール印刷などの特殊分野に強みを持つ会社、大手食品メーカー・化粧品メーカーなどと継続取引がある会社は、のれん部分が3倍以上で評価されるケースがあります。業界全体で需要が伸びている分野であり、買い手からの注目度も高い状況です。
売却価格を上げる要因・下げる要因
価格が上がる要因
- パッケージ・ラベル・シール・特殊印刷など付加価値の高い分野に強み
- 大手取引先との安定した継続取引がある
- 印刷機・加工設備が比較的新しく、デジタル対応も進んでいる
- 京都特有の顧客基盤(自治体・寺社・観光施設・京菓子・伝統工芸関連など)
- 自社所有の工場・事務所で立地が良い
- 若手職人の育成が進んでいる
価格が下がる要因
- オフセット印刷中心でデジタル化への対応が遅れている
- 印刷機・加工設備が老朽化し、大規模更新が近い
- 特定の大口取引先への依存度が高すぎる
- 紙媒体の受注(新聞・雑誌・カタログなど)に偏重している
- 職人の高齢化が進み、若手がいない
京都の印刷業の売却市場
京都府内の印刷業は、観光パンフレット・寺社関連印刷物・京菓子や漬物などのパッケージ・和装関連のカタログ・高級料理店のメニューなど、京都特有の需要に支えられた事業者が多い市場です。全国の印刷グループ・関西の大手印刷会社・同業他社からの引き合いが継続的にあります。
特にパッケージ印刷・ラベル印刷・シール印刷・小ロット特殊印刷などの分野で強みを持つ会社は、付加価値の高い事業として高く評価されます。
よくある質問
Q. 相場より高く売るにはどうすればいいですか?
パッケージ・ラベル・特殊印刷などの付加価値の高い分野への事業シフト、デジタル印刷・オンデマンド印刷への対応、大口取引先への依存度を下げる多角化などが価格アップにつながります。売却まで1〜2年の準備期間を取れるなら、これらの施策を実行する時間が確保できます。
Q. 赤字でも売却できますか?
可能です。赤字でも印刷機・加工設備・取引先・技術者に価値があれば、買い手は見つかります。のれん部分はゼロまたはマイナスになりますが、時価純資産部分(設備・不動産など)は評価されます。特に自社工場を所有している場合、不動産価値だけで一定の売却価格が期待できます。
印刷業の売却で特有の論点
- 印刷機のリース契約の取り扱い:複数のリース契約が並行して走っているケースが多く、売買契約前にリース会社と名義変更・残債精算の方針を協議する必要があります
- 顧客データ・版下データの帰属確認:顧客から預かっている版下データ・印刷データの引き継ぎ後の管理責任範囲を売買契約書に明記
- 請負契約・入札参加資格の承継:自治体・公的機関への入札参加資格、継続請負契約は株式譲渡なら原則継続しますが、承継通知が必要な契約もあります
- 色見本・標準色の引き継ぎ:特定顧客向けの色指定・標準色データは、品質維持のために確実な引き継ぎが必要
- 工場の環境関連リスク:インキ・溶剤などの取り扱い、廃液処理、土壌汚染リスクなど環境デューデリジェンスが実施されることがあります
あわせて読まれています
まずはご相談ください
印刷業の売却価格は、設備・取引先・技術によって大きく変わります。自社の場合いくらになりそうか、まずは無料相談でお気軽にお問い合わせください。秘密厳守・相談無料・売り込みは一切しません。
ご相談を、代表の吾郷が直接お受けします。


コメント