グループホーム(認知症対応型共同生活介護)を運営してきた。入居者の方々との関係も深い。でも後継者がいない。このままでは廃業するしかないのか。
グループホームは、廃業が最も難しい福祉施設の一つです。入居者の方の生活の場をなくすことになるからです。M&Aで適切な運営者に引き継ぐことが、経営者・入居者・職員の全員にとって最善の選択になります。
この記事では、グループホームのM&Aで実際に使われる価格の計算方法と、買い手候補の傾向、京都での実情をお伝えします。
グループホームの売却価格はどう決まるか
小規模M&Aでは、売却価格は「時価純資産+のれん」という考え方で算出するのが一般的です。
時価純資産とは、貸借対照表の資産から負債を引いた純資産を時価ベースで評価したものです。事業用不動産や設備があれば、その評価額が反映されます。
のれんとは、簡単にいえば「この事業が持つ将来性・収益力・地域での信頼」に対する評価です。グループホームの場合、直近1〜3年の営業利益(または経常利益)に1〜3倍程度の倍率をかけて算出します。倍率は事業の状態によって変わります。
のれん倍率を左右する4つの要素
①稼働率
グループホームの収益は稼働率に直結します。定員に対して常時8〜9割以上の入居者がいる施設は、収益の安定性が高く評価されます。逆に稼働率が低い状態が続いていると、のれんの評価は下がります。
②許認可・指定の状況
認知症対応型共同生活介護の指定を継続して保持していることは、買い手にとって大きな価値です。許認可の取得には時間とコストがかかるため、既存の指定をそのまま引き継げる形であることが重要です。
③介護職員・管理者の人材
買い手が最も重視するのが「人」です。管理者や介護職員が引き続き働いてくれる見通しがあるかどうかが、倍率に直接影響します。経験のある職員ごと引き継げるグループホームは、採用難の現在において非常に魅力的に映ります。
④ユニット数と規模
グループホームには1ユニット(定員9名)と複数ユニットの施設があります。複数ユニットを運営している施設の方が、規模を求める買い手も含めて選択肢が広がります。ただし、1ユニットであっても、立地・稼働率・職員体制が整っていれば買い手がつくケースはあります。「規模が小さいから難しいだろう」と思い込む前に、一度状況をお聞かせください。
グループホームの価格算定の考え方
小規模なグループホームのM&Aでは、売却価格は「時価純資産+のれん(営業利益の2〜3年分)」で算定されることがほとんどです。ユニット数や売上規模だけで相場が決まるわけではなく、各施設の財産状況と収益性、そしてグループホーム特有の指定・稼働率・職員体制の状況で金額が大きく変わります。
時価純資産の考え方
貸借対照表の純資産を、時価ベースで評価し直した金額です。グループホームでは以下の項目が重要になります。
- 建物・設備の時価評価:自己所有の場合は建物の残存価値を時価で再評価します。賃貸の場合は敷金・礼金を確認します
- 介護ベッド・備品:使用中の備品・設備は中古価値で評価します
- 入居一時金預り金:返還債務として控除対象になります
- 退職給付引当金・未払残業代:簿外債務として控除されるケースがあります
のれん(年倍法)の考え方
事業を続けることで生まれる将来の収益価値です。直近の営業利益の2〜3倍を目安に算定することが多く、グループホームの場合は以下の要素で倍率が変動します。
- 介護保険の認知症対応型共同生活介護の指定を保有していること(取得困難な指定のため高く評価されます)
- 稼働率が高水準で安定していること(90%以上が評価の目安)
- 計画作成担当者・介護職員・看護職員の人材が確保・継続雇用できていること
- 行政指導・実地指導での指摘事項がないこと
参考例
営業利益1,000万円・時価純資産3,000万円の1ユニット・9名定員のグループホームの場合、株価の目安は「3,000万円 + 1,000万円 × 2〜3年 = 5,000万〜6,000万円」程度になります。ただし実際の価格は建物の状態・稼働率・立地によって大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。2ユニット・18名定員以上の大規模施設、もしくは複数拠点を運営している場合はさらに上振れるケースがあります。
グループホームのM&Aで想定される買い手
①介護事業を拡大したい法人
デイサービスや訪問介護を運営する法人が、グループホームを加えてサービスを多角化するケースです。地域での介護サービス網を広げたい事業者にとって、既存の施設・職員・入居者が揃った状態で取得できるM&Aは、効率的な拡大手段です。
②医療法人・社会福祉法人
病院・クリニックと連携した在宅医療・地域包括ケアの一環としてグループホームを取得するケースです。地域密着型のケア体制を強化したい法人が買い手になることが多いです。
③介護分野に参入したい異業種企業
不動産会社・建設会社など、施設運営に関心を持つ企業が買い手になることもあります。社会的意義のある事業への参入として検討されるケースです。
入居者・職員への影響はどうなるか
M&Aでは、入居者の方は原則としてそのまま継続して入居できます。施設の運営が継続されるため、生活の場が失われる廃業とは根本的に異なります。
職員についても、引き続き同じ職場で働けるケースがほとんどです。むしろ、法人としての安定性が高まることで、処遇改善につながる場合もあります。
売却を検討するなら、早めに動く理由
グループホームのM&Aは、売り手の体力がある段階で動き出すことが重要です。経営者が高齢になり、判断力や体力が落ちてからでは、交渉の場でも不利になります。
また、介護事業のM&Aは行政への変更届出や指定の引き継ぎ手続きが伴うため、通常6ヶ月〜1年程度のスケジュールを見ておく必要があります。「まだ売ると決めていない」という段階から動き始めることで、納得のいく条件で決断できる余裕が生まれます。
よくある質問
Q. 廃業とM&A、入居者への影響はどう違いますか?
廃業の場合、入居者の方は別の施設への転居を余儀なくされます。M&Aであれば施設の運営は継続されるため、入居者の生活環境を変えずに済みます。経営者として責任を果たす意味でも、M&Aは廃業より優先して検討すべき選択肢です。
Q. 許認可はM&Aで引き継げますか?
株式譲渡の場合は、認知症対応型共同生活介護の指定はそのまま引き継げます。事業譲渡の場合は、買い手が新たに指定を受ける手続きが必要ですが、既存の実績があることで手続きがスムーズになるケースが多いです。どちらが適しているかは、施設の状況によって異なります。
Q. 相談してから成約まで、どれくらいかかりますか?
一般的に6ヶ月〜1年程度です。買い手候補の選定・条件交渉・行政手続きを経て引き渡しになります。早めにご相談いただければ、スケジュールに余裕を持って進めることができます。
京都のグループホームM&Aの特徴
京都府の認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、地域密着型サービスのため京都市・宇治市などの各市町村が指定を行っています。新規参入の制限が厳しく、既存事業所の取得は介護法人にとって有力な拡大手段です。
特に京都市内では、土地・建物コストが高いため自社物件での開設が難しく、運営中の事業所を取得する需要が高まっています。稼働率が高く、地域に根付いた事業所であれば、引き継ぎ先が見つかりやすい状況です。
グループホームを廃業するとどうなるか
グループホームの廃業は、他の介護施設と比べても特に影響が大きいです。入居者の方にとって、グループホームは「自宅」に近い生活の場です。廃業によって退居を求めることは、入居者と家族に大きな負担を与えます。
- グループホームを廃業する前に|M&Aという選択肢と廃業コストの比較
- 入居者の行き先確保:退居先を自力で探す必要があり、特別養護老人ホームや他のグループホームへの転居調整に多大な労力がかかります
- スタッフの解雇:長年ともに働いてきたスタッフ全員が職を失います
- 原状回復費用:建物の修繕・清掃費用が発生します
- 売却対価はゼロ:廃業では手元に残るものはなく、むしろコストがかかります
M&Aであれば、入居者はそのまま継続入居できます。スタッフの雇用も守れます。そして経営者には売却対価が入ります。個人保証も解除されるケースが多く、引退後の生活設計が立てやすくなります。
まず知りたいことだけでも構いません
「うちのグループホームはいくらになるのか」「買い手が本当に見つかるのか」「入居者への告知をどうするか」——どんな疑問でも、まずお話しください。売ると決めていなくても構いません。相談料は無料です。秘密は厳守します。
1,000件以上の事業承継・M&A相談に対応してきた代表の吾郷が、最初から最後まで直接担当します。
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まずはご相談ください
「売ると決めたわけではない」という段階でも構いません。会社がいくらになるのか、廃業と売却どちらが得なのか——そういった入口でも、お話をお聞きします。
一人で抱えているより、一度ご相談いただく方が、気持ちが楽になることがあります。
ご相談を、代表の吾郷が直接お受けします。


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