グループホームの廃業vs M&A|閉所費用と売却のどちらが得か【京都】

66歳。1ユニット9名のグループホームを、京都で12年運営してきた。認知症のある入居者さんと毎日向き合い、ご家族とも信頼関係を築いてきた。でも、介護職員の採用難、夜勤体制の維持、報酬改定——続けていく気力が、少しずつ削られていないでしょうか。後継者もいない。このまま閉めるしかないのか。

廃業を決める前に、一度だけ比較してみてください。廃業は建物・什器の処分費だけでなく、何より入居者さんの転居先確保という重い課題を伴います。M&Aなら、入居者さんはそのまま住み続けられ、職員の雇用も守られ、あなたは対価を受け取って引退できます。

ご相談は秘密厳守です。相談したことが職員やご家族、市町村に伝わることはありません。売ると決めていない段階のご相談が、実際にはいちばん多いです。
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廃業とM&A、何が違うか

廃業M&A
入居者さん・ご家族への影響転居先探しが必要(認知症の方には大きな負担)そのまま住み続けられる
売却対価なしあり(指定・建物・入居者基盤として評価)
介護職員・計画作成担当者の雇用全員解雇継続雇用が前提
建物・什器処分費用300万〜800万円が必要不要(資産として評価される)
認知症対応型事業所指定廃止届を提出(市町村と調整)買い手に承継または再指定
経営者個人の借入保証返済しきれなければ個人に残る解除・付け替えを交渉できる

売却で守れるもの——お金だけの話ではありません

  • 経営者個人の保証・借入からの解放:建物取得や運転資金の借入に個人保証を入れている場合、株式譲渡では買い手側への保証の付け替え・解除を交渉するのが一般的です。廃業して返済しきれなければ保証は個人に残りますが、譲渡なら「保証を外して引退する」道が開けます。
  • 入居者さんの住まい:認知症のある方にとって環境の変化は症状悪化のリスクを伴います。譲渡なら住み慣れた部屋・顔なじみの職員・生活リズムがそのまま守られます。
  • 職員の雇用:廃業なら全員解雇ですが、譲渡なら計画作成担当者・夜勤スタッフを含めて雇用は引き継がれるのが基本です。
  • 売却対価:指定・入居者基盤・建物の価値が評価され、引退後の資金として対価を受け取れます。

売却価格の相場——グループホームはこう評価される

小規模なグループホームのM&Aでは、売却価格は「時価純資産+のれん(営業利益の2〜3年分)」で算定するのが一般的です。定員や売上の大きさだけで相場が決まるわけではなく、収益性・資産の状態・そしてグループホーム特有の運営基盤で金額が変わります。

時価純資産の考え方

  • 建物:自社所有なら時価評価で加算。賃借なら敷金・保証金の回収可能性を精査します
  • 什器・福祉用具:ベッド・特殊浴槽・送迎車両などを中古価値で評価します
  • 退職給付引当金・未払残業代:簿外債務として控除されるケースがあります

のれんを左右する4つの要素

  • 入居率と待機者:9名満床が続き、待機者がいる事業所は収益の見通しが立てやすく、高く評価されます
  • 計画作成担当者と夜勤体制の継続:運営の生命線である人員体制が譲渡後も維持できる見通しがあるか
  • 建物の状態と家賃条件:大規模修繕の時期、賃借の場合は家賃水準が収益力に直結します
  • 市町村との関係:地域密着型サービスとして、運営推進会議の実績や行政指導・監査での指摘の有無が見られます

参考例

営業利益400万円・時価純資産1,200万円のグループホームなら、株価の目安は「1,200万円 + 400万円 × 2〜3年 = 2,000万〜2,400万円」程度です。実際の価格は買い手との交渉で決まるためあくまで目安ですが、廃業なら300万〜800万円の持ち出しになるところが、譲渡なら受け取る側に回る——この差は決して小さくありません。決算書3期分を拝見できれば、おおよその価格帯をお伝えできます。

「もう潰れるしかない」と思う前に

グループホームの経営が立ち行かなくなる道筋には、段階があります。どの段階にいるかで、まだ打てる手が変わります。

職員の退職が続き、夜勤が回らなくなってきた——この段階なら、人材基盤を持つ買い手への譲渡で体制を立て直せる可能性が十分あります。買い手側から応援職員を入れて運営を安定させるケースもあります。

空室が埋まらなくなってきた——満床時より評価は下がりますが、指定と建物、残っている入居者さんの基盤には価値があります。空室が増えきる前に動くほど、条件は良くなります。

報酬改定や物価高で赤字に転落した——赤字でも、のれんは下がりますが指定・人材・地域基盤を評価する買い手はいます。倒産まで追い込まれてからでは選択肢がなくなります。資金繰りに不安を感じた時点が、相談のタイミングです。

共通するのは、悪化しきってからでは遅いということです。「潰れるかもしれない」と頭をよぎった段階なら、まだ複数の選択肢から選べます。

グループホームの廃業にかかる費用の目安

  • 建物の解体または原状回復:自社所有の場合は解体、賃借の場合は原状回復で200万〜500万円
  • 什器・福祉用具の処分:ベッド・車椅子・手すり・特殊浴槽等で50万〜150万円
  • 入居者さんの転居支援・引継ぎ対応:転居先調整・ご家族への説明・医療連携の移管で数十万円相当の工数
  • 認知症対応型事業所廃止届・市町村対応:地域密着型指定の返上手続きで数万〜20万円
  • 顧問税理士・司法書士への報酬:清算手続きで30万〜80万円
  • 従業員(介護職・計画作成担当者・夜勤スタッフ)への退職金:規模・在籍年数により数百万円以上

合計の目安は300万〜800万円。ただし金額以上に重いのが、入居者さんの転居先確保です。認知症のある方にとって環境変化は症状悪化のリスクがあり、ご家族との調整、次の施設との連携、医療機関との情報共有など、金額に表れない負担が長期間続きます。

M&Aでグループホームが評価される理由

入居者の継続入居という価値:最も高く評価されるのは「入居者さんがそのまま住み続けられる」こと自体です。この社会的意義の高さが、買い手にとっての価値の中核です。

認知症対応型事業所指定と地域密着性:指定は市町村が行う地域密着型で、新規取得には計画との整合・運営推進会議・人員基準など時間のかかる要件が伴います。既存事業所の承継なら、指定と市町村との関係を引き継げるため、買い手は参入コストを大幅に節約できます。

人員体制とネットワーク:計画作成担当者・夜勤体制、そしてご家族・かかりつけ医・地域包括支援センターなどとの連携は、新規参入者には築けない無形資産です。

買い手はどこにいるか——京都の動向

買い手候補は、複数拠点展開を進める介護事業者、高齢者ケア分野へ拡大する医療法人、事業範囲を広げる社会福祉法人、建物とセットで取得する事業投資家などです。

京都府は高齢化率の上昇と認知症高齢者の増加を背景に、グループホームの需要が続いています。京都市内・宇治市・亀岡市・舞鶴市など各地域に小規模事業所が分布する一方、採用難・夜勤維持・報酬改定で経営継続が難しくなる事業者も増えており、中堅介護事業者による承継や医療法人による拡大など、入居者さんの生活継続を重視したM&Aが府内で発生しています。

よくある質問

Q. 入居者9名の1ユニット事業所です。それでも買い手は見つかりますか?

見つかるケースは多くあります。グループホームは1ユニット9名が基本形ですので、標準的な規模です。規模より、指定・入居者の継続性・職員体制・建物状態が評価されます。中堅介護事業者はむしろ1ユニット事業所の承継を起点にエリア展開を進めるケースが多いです。

Q. 赤字が続いています。それでも売れますか?

可能性はあります。のれんの評価は下がりますが、指定・人員体制・入居者基盤そのものに価値を見出す買い手はいます。廃業すれば300万〜800万円の持ち出しになることと比較すれば、譲渡のほうが手元に残るケースも少なくありません。

Q. 建物を賃借しており、家賃が経営を圧迫しています。M&Aは可能ですか?

可能です。買い手側で家賃条件の見直しやオーナーとの交渉を行うケースが多く、承継を機に家賃改定が実現することもあります。現状を率直に開示していただければ、協議の中で解決策を探せます。

Q. 入居者さんやご家族に知られずに進められますか?

進められます。基本合意までは秘密保持契約のもとで水面下で進行し、告知は最終契約の直前が一般的です。ご家族への説明は買い手との連名で、丁寧に行います。

売却の具体的な進め方は、グループホームを売却したい方へで相談から引き継ぎまでの流れをご案内しています。


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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
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