社長が急死・倒れたら会社はどうなる|家族がすることと、元気なうちの備え【京都】

東京商工リサーチによると、2026年4月から9月の人手不足関連倒産のうち「後継者難」によるものは263件(負債1,000万円以上)でした。そのうち、代表者の死亡が120件、体調不良が105件です。

いつか誰かに譲ろうと考えていた社長ほど、思いがけない体調の変化で、その段取りが崩れます。体調を崩してからのご相談で多いのは、家族が会社のことをほとんど知らず、何から手を付けたらいいか分からないという話です。

取締役が社長1人の会社では、会社を動かす人がいなくなる

取締役や代表取締役が任期を終えたときや辞めたときは、次の人が決まるまで、前の人がそのまま務めを続けることになっています(会社法第346条・第351条)。亡くなった場合は、この決まりに当たりません。

取締役が社長1人の会社では、社長が亡くなった時点で、会社として物事を決める人がいなくなります。ほかにも取締役がいる会社なら、残った取締役で会社を動かせます。

社長が持っていた株は、遺産の分け方が決まるまで、相続人みんなで持っている形になります(民法第898条)。この株で株主としての権利を使うには、相続人の中から1人を決めて、会社に知らせます(会社法第106条)。株主総会は、株主全員が同意すれば、招集の手続きを省いて開けます(第300条)。そこで新しい取締役を選びます。

相続人の間で話がまとまらないときは、裁判所に申し立てて、一時的に取締役や代表取締役の務めを果たす人を選んでもらう道もあります(第346条第2項・第351条第2項)。

給料や支払い、取引先との約束は、誰が決めるのか

新しい取締役が決まるまでは、新しい契約を結ぶことも、銀行と借入の話をすることも、会社として決める人がいません。その間にも、社員の給料日や、仕入れ先への支払いの日は来ます。

ここで時間がかかるのは、社長しか分からないことが多い会社です。どの取引先と、どんな約束をしていたのか。どの銀行から、いくら借りているのか。帳簿や契約書を探すところから始めることになります。

経理を任されていた社員、長く勤めている社員、顧問の税理士。会社の中のことを知っている人に、早いうちに話を聞いておきます。

借入と社長の個人保証は、相続される

会社の借入は会社が返すもので、家族が肩代わりするわけではありません。ただ、社長が会社の借入に個人保証をしていた場合、その保証は社長の財産と一緒に相続されます(民法第896条)。

続けて借りる分をまとめて保証する契約(根保証)では、社長が亡くなった時点で、保証の対象になる借入の元本が決まります。そのあとに会社が新しく借りた分は、保証の対象になりません(第465条の4)。

相続するか、放棄するかは、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に決めます(第915条)。家庭裁判所に申し立てれば、この期間を延ばしてもらうこともできます。どちらを選ぶかは、会社の財産や借入、保証の中身で変わるので、弁護士や税理士に早めに相談してください。会社を引き継いでもらう場合に保証をどう外すかは、会社を譲ったら、社長の個人保証と借金はどうなるのかにまとめています。

個人で営んでいる店や事業の許可は、期限までに届け出る

会社の場合、社長が亡くなっても、許可は会社に付いたまま残ります。代表者が代わったら、業種ごとに決められた変更の届出をします。

個人で営んでいる店や事業を家族が続けるときは、許可を引き継ぐための申請や届出に期限があります。建設業は、亡くなってから30日以内に認可を申請します(建設業法第17条の3)。旅館業は、簡易宿所も含めて60日以内に承認を申請します(旅館業法第3条の4)。飲食店は相続人が営業許可を引き継ぎ、遅滞なく保健所に届け出ます(食品衛生法第56条)。酒類の製造や販売は、遅滞なく税務署に申告します(酒税法第19条)。

期限を過ぎると、許可を取り直すことになる場合があります。続けるかどうか決めきれないうちでも、期限だけは先に確かめてください。ほかの業種の許可の引き継ぎは、事業譲渡で許可は引き継げるかで業種ごとに確かめられます。

急いで売ると、値段の交渉が難しくなる

社長が倒れてから、家族が会社を売る話を始めることもあります。そのときに多いのが、急いで売ることになって、値段の交渉が難しくなることです。

何社かの買い手と話して比べる時間も、条件を詰める時間も取れません。決算書や契約書、借入の一覧を集めるところから始めることになり、社長なら答えられた買い手の質問に、誰も答えられないこともあります。

会社の値段の目安は、会社の売却価格の無料算定で出せます。

元気なうちに決めておくこと

株に譲渡の制限がある会社では、定款で決めておけば、会社が、株を相続した人に「その株を会社に売ってほしい」と求めることができます(会社法第174条)。自分の会社の定款にこの決まりがあるかは、株を誰に渡すかを考える前に確かめておきたいところです。

借入の一覧、取引先との約束、通帳や印鑑の置き場所は、社長の頭の中にしかないことが多いものです。紙一枚にまとめて、家族か信頼できる社員に預けておけば、社長に何かあったとき、家族は銀行や取引先に何を聞けばいいかが分かります。

病気や認知症で判断ができない状態になると、その状態でした契約は無効になります(民法第3条の2)。株を譲る契約も、株主総会での議決も、遺言も、できなくなるおそれがあります。判断ができるうちに備える仕組みとして、任意後見や家族信託があります。中身は弁護士や司法書士に相談してください。

いつかは誰かに引き継いでもらうつもりなら、相手を探し始める時期も、体調が変わる前に決めておきます。つなぐパートナーズの成約事例では、相談から成約までに、早いもので1か月、長いもので1年ほどかかっています。

京都で会社の今後を考えている方へ

社長ご本人だけでなく、社長が倒れたあとに会社をどうするか迷っているご家族からのご相談も、つなぐパートナーズでお受けしています。

体調に不安を感じ始めたら、まだ決めていない段階でもご相談ください。会社を続けるのか、誰かに引き継いでもらうのか、今のうちにできることを一緒に確かめます。

この記事の数字と出典

項目 数字 出典
「後継者難」倒産 2026年度上半期(4〜9月)263件(年度上半期で過去最多)。うち代表者の死亡120件・体調不良105件。人手不足関連倒産(負債1,000万円以上・後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)のうち後継者難 東京商工リサーチ(2026年10月6日)
役員が欠けたとき 任期の満了又は辞任により退任した取締役・代表取締役は、次の人が就任するまで権利義務を有する(死亡は含まれない)。裁判所は利害関係人の申立てにより一時役員・一時代表取締役を選任できる 会社法 第346条・第351条
相続した株の権利 株式が共有のときは、権利を行使する者1人を定めて会社に通知しなければ権利を行使できない(会社が同意した場合を除く) 会社法 第106条(共有は民法第898条)
株主総会の招集の省略 株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催できる 会社法 第300条
相続人への売渡しの請求 譲渡制限株式を相続で取得した者に、会社に売り渡すよう請求できる旨を定款で定められる 会社法 第174条
個人保証の相続 相続人は被相続人の一切の権利義務を承継する。個人根保証は主たる債務者又は保証人の死亡で元本が確定する 民法 第896条・第465条の4
相続の承認・放棄の期間 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内。家庭裁判所で伸長できる 民法 第915条
意思能力 意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効 民法 第3条の2
建設業の相続 相続人が引き続き営むときは、死亡後30日以内に認可を申請 建設業法 第17条の3
旅館業の相続 相続人が引き続き営むときは、死亡後60日以内に承認を申請 旅館業法 第3条の4
飲食店(営業許可)の相続 相続人は許可営業者の地位を承継し、遅滞なく届け出る 食品衛生法 第56条
酒類の製造・販売の相続 引き続き営もうとする相続人は、遅滞なく税務署長に申告する(申告で免許を受けたものとみなす) 酒税法 第19条

最終確認:2026年10月21日

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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
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