「自分の整備工場はいくらで売れるのか。」
M&Aを検討する自動車整備業の経営者から最初に出てくる質問です。価格の決まり方を知っておくことで、売却・継続・後継者育成のどれが最善かを判断できるようになります。
小規模M&Aで使われる価格の計算方法
小規模M&Aでは一般的に「時価純資産+のれん(年倍法)」で価格を算定します。
時価純資産とは、会社の資産(現金・売掛金・設備・車両等)から負債(借入金・買掛金等)を引いた、実質的な財産価値です。決算書の純資産とは異なり、資産・負債を時価で評価し直した数字です。借入が多ければ純資産は小さくなり、債務超過の場合は時価純資産がマイナスになります。
のれん(年倍法)とは、事業を継続することで生まれる将来の収益価値です。修正営業利益に倍率をかけて算出します。自動車整備業では一般的に2〜4倍程度が目安です。
自動車整備業でのれんの倍率が決まる要素
のれんの倍率は、買い手がその会社をどれだけ魅力的に見るかで変わります。自動車整備業では以下の要素が倍率に影響します。
①認証・許可の種類
自動車整備業には「認証工場」と「指定工場(民間車検場)」があります。指定工場は車検を自社で完結できるため、認証工場より高く評価されます。指定工場の取得には設備・人員基準があり、新規取得が容易ではないため、既存の指定工場ごと引き継げるM&Aは買い手にとって大きな価値があります。
②有資格者の数
自動車整備士(1級・2級・3級)と自動車検査員の在籍数は倍率に直結します。特に指定工場の維持に必須の自動車検査員は希少性が高く、在籍の有無が評価を大きく左右します。有資格者が代表者一人に集中している場合は、引き継ぎ後のリスクとして倍率が下がります。
③固定客・車検顧客の安定性
車検は2年ごとの定期需要があり、固定客が多いほど将来の収益が安定します。車検顧客の継続率・台数が評価されます。ディーラー・フリート顧客(法人・企業の車両管理契約)がある場合は特に高く評価されます。
④設備・リフトの状態
車両リフト・診断機器・塗装設備などの状態が評価されます。設備が新しく稼働状態がよければ買い手の初期投資が少なくなるため、倍率が上がります。
⑤メーカー・ディーラーとの関係
特定メーカーの認定工場・ディーラーから紹介を受ける関係がある場合、安定した仕事の流入源として評価されます。
自動車整備業のM&Aで想定される買い手
同業の整備工場・整備チェーン
エリア拡大・指定工場の確保・有資格者の獲得を目的とした同業者が最も多い買い手です。整備士不足が深刻な業界では、資格者ごと引き継げるM&Aは採用コストを大幅に削減できる手段として注目されています。
中古車販売業・カーディーラー
整備機能を内製化したい中古車販売業者・ディーラーが買い手になるケースがあります。販売した車の整備・車検を自社で完結できるメリットがあります。
異業種からの参入企業
EV・カーシェア・モビリティ関連事業への参入を目指す企業が、整備工場の認証・設備・技術者を取得する目的でM&Aを検討するケースが増えています。
京都の自動車整備業M&Aの特徴
京都は観光業・宿泊業・運送業が集積しており、業務用車両の整備需要が安定しています。タクシー・バス・観光バスなどの業務用フリート顧客を持つ整備工場は、買い手から特に高く評価されます。また郊外エリアでは自家用車依存度が高く、地域密着型の整備工場は固定客を持つ安定したビジネスです。インバウンド需要の回復とともにレンタカー・ライドシェア車両の整備需要も増加しており、京都エリアの整備工場への買い手ニーズは高まっています。
売却のタイミングと準備
売却を決めてから動くより1〜2年前から準備した方が、確実に価格が高くなります。有資格者の確保・育成、指定工場の維持、固定客の拡大、決算書の整理が主な準備です。特に代表者が唯一の整備士である場合は、新たな有資格者の採用を先に進めておくことで買い手が安心して引き継げる体制が整います。
よくある質問
Q:認証工場でも売れますか?
A:売れます。指定工場より評価は低くなりますが、有資格者・固定客・設備がしっかりしていれば買い手はつきます。認証工場から指定工場への格上げを前提条件として交渉に組み込むケースもあります。また買い手が指定工場を持っている場合、認証工場を傘下に収めて整備機能を拡充する目的での取得もあります。
Q:売ると決めていなくても相談できますか?
A:もちろんです。「価格だけ知りたい」「廃業と売却どちらが得か知りたい」という段階でのご相談を歓迎します。財務諸表と認証・有資格者の状況を見せていただければ、おおよその価格帯をお伝えできます。
Q:個人保証はM&Aで解除できますか?
A:株式譲渡によるM&Aでは、売却後に買い手の経営者が新たに保証人になる交渉を金融機関と進めます。譲渡契約の締結前に、売り手と買い手が一緒に金融機関へ出向き、保証解除の内諾を得ることが重要です。銀行が買い手の信用力を認めれば、売り手の保証は解除されます。
売却価格の目安
年商1〜3億円規模の整備工場では、営業利益の2〜4倍が一つの目安です。指定工場と認証工場では評価に差が出ます。
指定工場(民間車検場)の場合
車検を自社で完結できる指定工場は、認証工場より高く評価される傾向があります。車検は2年ごとの確実な収益源であり、固定客の継続率が高いため、買い手にとって引き継ぎ後の収益が見通しやすいからです。倍率の上限に近い評価になるケースが多いです。
認証工場の場合
車検は外部に依頼する必要がありますが、整備・修理・板金の固定客が多い場合は一定の評価が得られます。有資格者の数・顧客の安定性・設備の状態が価格を左右します。
ただし価格は財務内容・借入・顧客構成によって大きく変わります。「年商がいくらだからいくら」という単純な計算にはなりません。まずは財務諸表を見せていただければ、おおよその価格帯をお伝えできます。
売却価格を上げるために今からできること
- 指定工場の資格を維持する:設備基準・人員基準を常に満たしておくことが前提です
- 有資格者を確保・育成する:代表者一人に集中しないよう、若い整備士の育成を進める
- フリート顧客を増やす:法人・企業の車両管理契約は安定収益として高く評価されます
- 決算書を整理する:役員報酬・不要経費を見直し、利益が正しく反映されるようにする
- 黒字の段階で動く:赤字になってからでは選択肢が狭まります
売却を決めてから動くより、1〜2年前から準備を始めた方が、確実に高い価格で売れます。
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まずはご相談ください
「売ると決めたわけではない」という段階でも構いません。
会社がいくらになるのか、廃業と売却どちらが得なのか——そういった入口でも、お話をお聞きします。
一人で抱えているより、一度ご相談いただく方が、気持ちが楽になることがあります。
ご相談を、代表の吾郷が直接お受けします。


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