「自分の電気工事会社はいくらで売れるのか。」
M&Aを検討する電気工事業の経営者から最初に出てくる質問です。価格の決まり方を知っておくことで、売却・継続・後継者育成のどれが最善かを判断できるようになります。
小規模M&Aで使われる価格の計算方法
小規模M&Aでは一般的に「時価純資産+のれん(年倍法)」で価格を算定します。
時価純資産とは、会社の資産(現金・売掛金・設備・車両等)から負債(借入金・買掛金等)を引いた、実質的な財産価値です。決算書の純資産とは異なり、資産・負債を時価で評価し直した数字です。借入が多ければ純資産は小さくなり、債務超過(負債が資産を上回る状態)の場合は時価純資産がマイナスになります。この場合、のれんの価値でそのマイナスを補えるかどうかが成立の鍵になります。
のれん(年倍法)とは、事業を継続することで生まれる将来の収益価値です。修正営業利益(実態に即した利益)に倍率をかけて算出します。この倍率が「何年分の利益を上乗せするか」を表しており、電気工事業では一般的に2〜4倍程度が目安です。
つまり売却価格は「今の財産価値+将来の収益価値」で決まります。
電気工事業でのれんの倍率が決まる要素
のれんの倍率は、買い手がその会社をどれだけ魅力的に見るかで変わります。電気工事業では以下の要素が倍率に影響します。
①有資格者の数と資格種別
電気工事士(第一種・第二種)・電気主任技術者・電気工事施工管理技士の在籍数は、倍率に直結します。特に第一種電気工事士・電気主任技術者は希少性が高く、在籍するだけで評価が上がります。反対に有資格者が代表者一人に集中している場合は、引き継ぎ後のリスクとして倍率が下がります。
②元請け比率・主要顧客の安定性
元請け比率が高いほど収益性が高く、倍率が上がります。下請け一辺倒の場合、元請けの意向次第で売上が左右されるリスクとして評価が下がります。また主要顧客が特定の1社に集中している場合もリスクとみなされます。大手ゼネコン・ハウスメーカーとの継続契約がある場合は高評価です。
③受注残・繰越工事の規模
引き継ぎ後すぐに売上が見込める受注残・繰越工事が多いほど、倍率が上がります。M&Aの交渉時点で受注残が積み上がっている会社は、買い手にとって安心感があります。
④建設業許可の種類
特定建設業許可を持つ会社は、4,000万円以上の下請け契約を発注できるため、大型工事の元請けとして機能できます。特定許可は一般許可より高く評価されます。電気工事業法に基づく登録が適切に維持されていることも前提条件です。
電気工事会社の売却価格を左右する実務指標
のれん倍率に影響する要素を理解したうえで、実際に買い手が注目する実務指標を押さえておきましょう。経営者の直感ではなく、数字で提示できる実績が、京都の電気工事会社の売却価格に直結します。
稼働現場数と工事規模分布
常時稼働している現場数、年間の工事件数、1件あたりの工事規模の分布は、電気工事業の健全性を示す指標です。大型工事1件への依存ではなく、中規模工事が分散している方が事業リスクが低いと評価されます。京都の電気工事会社では、年間30〜100件程度の工事を安定的にこなしている会社が標準的な評価水準となります。
継続取引先数と新規獲得率
5年以上継続している取引先が何社あるか、新規取引先の獲得ペースは年間何社か——これらは売上の安定性と成長性を示す指標です。公共工事入札への参加実績、指名願の提出先数も、京都府内の電気工事会社では重要な評価ポイントとなります。特定の元請けへの依存が高い電気工事業の売却では、依存リスクとして評価が下がる傾向にあります。
有資格者数と世代構成
第一種電気工事士、第二種電気工事士、電気主任技術者、1級・2級電気工事施工管理技士——これらの有資格者の数と年齢構成は、M&A後の運営継続性を左右します。有資格者が60代以上に偏っている場合は、承継後の育成計画が評価に影響します。若手の育成状況、資格取得支援制度の有無も、買い手が確認する項目です。電気工事業許可を維持する要件を満たす人員構成か、という視点が必ず入ります。
電気工事業のM&Aで想定される買い手
同業の電気工事会社・設備工事グループ
エリア拡大・有資格者の確保・受注残の引き継ぎを目的とした同業者が最も多い買い手です。人手不足が深刻な電気工事業界では、経験あるスタッフと許可をまとめて取得できるM&Aは採用コストを大幅に削減できる手段として注目されています。
ゼネコン・総合建設会社
電気工事機能を内製化したいゼネコン・総合建設会社が買い手になるケースもあります。外注コストの削減・工期管理の一元化がメリットです。
異業種からの参入企業
再生可能エネルギー・太陽光発電・EVインフラなどの分野に参入したい企業が、電気工事業の許可・技術者を取得する目的でM&Aを検討するケースが増えています。
京都での電気工事業M&Aの特徴
京都は古民家・町家・文化財建築の電気設備改修需要が全国でも特に高いエリアです。観光施設・宿泊施設・飲食店の電気工事実績を持つ会社は、京都特有の建設需要を背景に買い手から評価されます。
京都市内中心部・観光エリア
祇園・東山・中京区など観光地エリアでは、古民家リノベーション案件、町家改装、宿泊施設・飲食店の新規開業に伴う電気工事需要が高い状況です。文化財建築の電気設備改修は専門性が求められ、対応実績を持つ電気工事会社は希少価値として高く評価されます。
京都市南部・京都駅周辺
京都駅周辺・伏見区・南区は、商業施設やオフィスビル、ホテルの新築・改修工事が発生しやすいエリアです。大手ゼネコンとの取引関係を持つ京都の電気工事会社は、買い手から安定受注の基盤として評価されます。大型物件に対応できる有資格者体制も評価ポイントです。
京都府北部・郊外エリア
宇治市・長岡京市・亀岡市・舞鶴市など郊外エリアでは、住宅建築や地域インフラの電気工事が中心です。地域密着型で長年の取引先を持つ会社は、買い手から「新規参入困難なポジション」として評価されます。公共工事入札参加資格を持つ会社は、郊外エリアでは特に希少性が高い存在となります。
売却のタイミングと準備
売却を決めてから動くより1〜2年前から準備した方が、確実に価格が高くなります。有資格者の確保・育成、元請け比率の引き上げ、決算書の整理、受注残の積み上げが主な準備です。特に代表者が唯一の有資格者になっている場合は、新たな有資格者の採用を先に進めておくことで買い手が安心して引き継げる体制が整います。
また、公共工事入札への参加実績がある電気工事会社は、入札ランクの格付けを維持できるタイミングで売却するのが有利です。経営事項審査(経審)の更新時期を意識して承継準備を進めることで、買い手側は承継後もそのランクを引き継ぎやすくなります。電気工事業許可の有効期限、経審の更新時期、主要資格者の資格更新時期を年単位のカレンダーで整理しておくと、売却時期の選択肢が広がります。
よくある質問
Q:一人親方・個人事業主でもM&Aできますか?
A:個人事業主の場合は事業譲渡という形になります。許可・顧客・設備・スタッフを一括して譲渡することは可能ですが、建設業許可は個人と法人で別扱いになるため手続きが複雑になります。まずご相談ください。
Q:赤字でも売れますか?
A:赤字でも有資格者・許可・顧客が揃っていれば買い手がつくことがあります。人手不足が深刻な業界のため、人材確保を目的とした買い手が赤字会社を取得するケースは少なくありません。
Q:売ると決めていなくても相談できますか?
A:もちろんです。「価格だけ知りたい」「廃業と売却どちらが得か知りたい」という段階でのご相談を歓迎します。財務諸表と許可・有資格者の状況を見せていただければ、おおよその価格帯をお伝えできます。
Q:個人保証はM&Aで解除できますか?
A:株式譲渡によるM&Aでは、売却後に買い手の経営者が新たに保証人になる交渉を金融機関と進めます。譲渡契約の締結前に、売り手と買い手が一緒に金融機関へ出向き、保証解除の内諾を得ることが重要です。銀行が買い手の信用力を認めれば、売り手の保証は解除されます。
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まずはご相談ください
「売ると決めたわけではない」という段階でも構いません。
会社がいくらになるのか、廃業と売却どちらが得なのか——そういった入口でも、お話をお聞きします。
一人で抱えているより、一度ご相談いただく方が、気持ちが楽になることがあります。
ご相談を、代表の吾郷が直接お受けします。


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