動物病院の売却・M&Aは誰に相談?京都の事業承継の流れと窓口

62歳。京都市内で20年続けてきた動物病院。後継者はおらず、勤務してくれている獣医師は2名。「そろそろ次のことを考えないと」と頭の片隅で思いながら、いったい誰に相談すればいいのか分からないまま、また一年が過ぎていく——。

そんな院長先生は、決して少なくありません。動物病院の譲渡やM&Aは、一般の会社の売買とは少し勝手が違います。患者である動物たち、その飼い主さんとの信頼関係、専門資格を持つスタッフ、特殊な医療機器。守りたいものが多いからこそ、「どこに相談すればいいのか」で立ち止まってしまう方が多いのです。

この記事では、動物病院の売却・事業承継を考え始めた院長先生に向けて、誰に・いつ・何を持って相談すればよいのかを、できるだけ具体的にお伝えします。

まずは、相談だけでも大丈夫です

「まだ売ると決めたわけではない」「家族にも話していない」——その段階で構いません。むしろ、その段階だからこそ早めにお話を聞かせていただきたいのです。秘密は厳守します。ご相談いただいた内容が外部に漏れることは一切ありません。スタッフや取引先、飼い主さんに知られることなく、静かに検討を進められます。

動物病院の譲渡は、どこに相談できるのか

相談先にはいくつかの選択肢があります。それぞれに得意なことと、限界があります。

M&A仲介会社は、買い手探しから条件交渉まで一括して任せられるのが強みです。ただし大手の仲介会社は、ある程度の規模(売却額が大きい案件)を主な対象としていることが多く、小規模な動物病院は「対応の対象外」とされたり、後回しにされたりすることがあります。手数料体系も会社によって大きく異なります。

顧問の税理士・会計士は、ふだんから決算を見てもらっている安心感があります。一方で、M&Aや事業承継の実務に精通しているとは限りません。「数字は分かるが、買い手の探し方や交渉は専門外」というケースもあります。

獣医師会のつてや知人の紹介は、相手の人柄が分かる安心感があります。ただし、身近な相手だからこそ「断りづらい」「条件交渉がしにくい」という難しさがあり、検討段階の情報が業界内に広まってしまうリスクもあります。

もう一つの選択肢が、国の認定を受けた事業承継の支援機関(認定経営革新等支援機関)に相談するという方法です。認定支援機関は、中小企業の事業承継を公的な裏付けのもとで支援する立場にあり、小規模な案件であっても、売り手の立場に立って親身に伴走することを役割としています。大手仲介が扱いにくい規模の動物病院こそ、こうした相談先が向いている場合があります。

相談するなら、いつがよいのか

結論から言えば、「早すぎる」ということはありません。

動物病院の譲渡は、買い手となる獣医師や法人を探すのに時間がかかります。条件の合う相手が見つかるまで、半年から一年、あるいはそれ以上かかることも珍しくありません。「体調を崩してから」「気力がなくなってから」動き始めると、選択肢が狭まり、納得のいく相手を選ぶ余裕がなくなってしまいます。

体力も気力も、判断力も十分にあるうちに動き始める。それが、ご自身にとっても、引き継ぐスタッフや動物たちにとっても、いちばん良い結果につながります。相談の段階では何の費用も決断も必要ありません。まず「どんな選択肢があるのか」を知るところから始めれば十分です。

とくに動物病院の場合、院長先生ご自身が現役で診療を続けているうちに動くことが大切です。診療を続けながらであれば、患者数や収益が安定した状態で買い手に引き継げますし、引き継ぎ期間中に飼い主さんへ後任の先生を紹介していくこともできます。逆に、休業や廃業を決めてから動き始めると、患者が離れ、病院としての価値そのものが下がってしまいます。「まだ元気なうちは大丈夫」ではなく、「元気なうちだからこそ相談する」と考えていただきたいのです。

相談前に、準備しておくとよいもの

「きちんと資料を揃えてからでないと相談できない」と考える必要はありません。手ぶらでお越しいただいても、お話を伺いながら一緒に整理していけます。ただ、もし手元にあれば話が早く進むものを挙げておきます。

直近3期分ほどの決算書。スタッフの構成(獣医師・動物看護師の人数や雇用形態)。カルテや診療記録の管理方法。レントゲンや血液検査機器などの設備のリスト。そして、病院の建物が賃貸か自己所有かという不動産の状況。これらが分かると、譲渡の進め方や想定されるスケジュールをより具体的にお話しできます。

繰り返しになりますが、すべてが揃っていなくても構いません。「決算書がどこにあるか分からない」という状態でも、相談を始めることはできます。

動物病院ならではの、相談しておきたいこと

動物病院の譲渡には、ほかの業種にはない固有の論点があります。相談の段階で、こうした点も気にかけておくと安心です。

院長個人への信頼をどう引き継ぐか。動物病院は「あの先生だから連れていく」という、院長個人への信頼で成り立っている面があります。譲渡後も飼い主さんが安心して通い続けられるよう、引き継ぎ期間をどう設けるか、しばらく院長が診療に残るかどうかなど、相手と相談して決めていく必要があります。

スタッフの雇用をどう守るか。勤務獣医師や動物看護師は、病院にとってかけがえのない財産です。譲渡後も働き続けられるよう、雇用の継続を買い手と取り決めておくことが、スタッフの安心にもつながります。

飼い主さんへの告知のタイミング。いつ、どのように飼い主さんへ伝えるか。早すぎても不安を与え、遅すぎても不信につながります。これも相手とよく相談しながら、丁寧に進めるべき部分です。

医療機器やカルテシステムの扱い。動物用の医療機器やカルテ管理システムをそのまま引き継ぐのか、入れ替えるのか。これによって譲渡の条件や引き継ぎの進め方が変わってきます。

こうした一つひとつを、院長先生お一人で抱え込む必要はありません。それぞれをどう整理し、どう進めていくかを一緒に考えるのが、私たちの役割です。

相談から引き継ぎまで、どんな流れで進むのか

「相談したら、いきなり話が進んでしまうのでは」と不安に思われる方もいます。実際の流れは、もっとゆっくりとしたものです。

はじめは、現状をお聞きするだけの面談から始まります。病院の状況やお気持ちを伺い、どんな選択肢があるかをご説明します。ここで「やはりもう少し考えたい」となれば、それで構いません。次に、譲渡を前向きに検討される場合は、病院の価値の整理や、どんな買い手が候補になりうるかの検討に入ります。条件の合いそうな相手が見つかれば、面談を重ね、お互いの希望をすり合わせていきます。合意に至れば契約を結び、引き継ぎ期間を経て、正式に譲渡が完了します。

この間、院長先生のペースを最優先します。途中で立ち止まることも、見送ることもできます。一つずつ、納得しながら進めていける——それが小規模な動物病院の事業承継の進め方です。


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まずはご相談ください

動物病院をどうしていくか。その答えは、院長先生お一人で出すには重すぎるものです。20年、30年と築いてこられた病院を、納得のいくかたちで次へつなぐために、まずは誰かに話してみることから始めませんか。

「売ると決めていなくてもいい」「何から手をつければいいか分からない」——その段階のご相談こそ、私たちがいちばんお力になれるところです。秘密は固く守ります。

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