農業・農業法人を続けてきた。でも後継者がいない。農地をどうすればいいかもわからない。このまま廃業するしかないのか。
農業・農業法人のM&Aは、農地・設備・販路・ブランドを一体で引き継げる点が評価されます。農地法の制約があるため一般的なM&Aとは異なる部分がありますが、適切な方法で進めれば事業を引き継ぐことは可能です。
売却価格はどう決まるか
農業法人のM&Aでは、売却価格は「時価純資産+のれん」という考え方で算出するのが一般的です。
時価純資産の主な資産は、農業機械・施設(ハウス・倉庫)・在庫(農産物・苗・肥料)です。農地については、農業法人が所有している場合は資産に含まれますが、農地法の制約から買い手の要件があります。賃借している農地は、賃貸借契約の引き継ぎが前提になります。
のれんは、販路の安定性・ブランド力・栽培技術・認証の有無に対する評価です。直近1〜3年の営業利益に倍率をかけて算出します。まずは決算書3期分を見せていただければ、おおよその価格帯をお伝えできます。
農業M&Aならではの注意点:農地法の制約
農業のM&Aで最も重要なのが農地法への対応です。農地の取得・賃借には農業委員会の許可が必要であり、買い手が農業法人や農家でなければ農地を取得できません。
このため、株式譲渡でM&Aを行う場合は法人ごと引き継ぐため農地法の制約を受けにくいですが、買い手となる法人が農業関連であることが前提になるケースが多いです。事業譲渡の場合は農地の引き継ぎに農業委員会の許可が必要です。どちらの方式が適しているかは、農地の所有・賃借の状況によって異なります。
のれん倍率を左右する4つの要素
①販路・取引先の安定性
農協・直売所・スーパー・飲食店・EC通販など、どのような販路を持っているかが評価の核心です。複数の販路に分散しているほど収益が安定し、評価が上がります。固定の取引先との長期契約がある場合は継続収益として高く評価されます。
②ブランド力・認証の有無
有機JAS認証・GAP認証・地域ブランド(京野菜・宇治茶等)の取得実績がある農業法人は、付加価値が高く評価されます。認証の取得には時間とコストがかかるため、買い手にとって引き継ぎの大きなメリットになります。
③農業機械・施設の状態
トラクター・田植え機・ハーベスター・ビニールハウスなどの農業機械・施設は高額の固定資産です。稼働中の状態での評価は処分価格より高く、廃業して処分するよりM&Aで引き継ぐ方が有利です。機械の年式・整備状況・施設の状態が査定に影響します。
④栽培技術・従業員の熟練度
長年かけて蓄積した栽培ノウハウ・品質管理技術は、代替が難しい資産です。熟練した従業員が引き続き働いてくれる見通しがあるほど、技術継承のリスクが下がり評価が上がります。
M&Aで想定される買い手
①農業法人・農業参入企業
農地・設備・販路の拡大を目的とした買収です。規模を拡大したい農業法人や、農業参入を検討している一般企業が買い手になるケースです。農地法をクリアした農業法人格を持つ買い手が対象になります。
②食品メーカー・流通会社
原料の安定調達・産地直送の実現を目的とした買収です。自社ブランドの農産物を安定的に確保したい食品メーカーや、産地直送ルートを確立したい流通会社から関心を持たれることがあります。
③異業種からの農業参入企業
6次産業化・SDGs・ESGの観点から農業に参入したい企業が買い手になるケースです。農業の許可・設備・販路が揃った状態での取得は、ゼロから参入するより大幅にリスクが低いです。
京都での農業M&Aの特徴
京都は「京野菜」「宇治茶」など全国的なブランド力を持つ農産物の産地です。ブランド産地として認知された農業法人は、通常の農業法人より広い買い手層を想定できます。京野菜の栽培技術・宇治茶の生産ノウハウは、地域ブランドとして付加価値が高く評価されます。
また、京都市内・近郊の農地は観光農園・体験農業への転用ニーズもあり、食品以外の用途を含めた買い手から関心を持たれることがあります。
売却を検討するなら、早めに動く理由
農業法人のM&Aは、農業委員会への手続き・農地の引き継ぎ調整が伴うため、相談から引き渡しまで通常6ヶ月〜1年以上かかります。農繁期を避けてスケジュールを組む必要もあります。
経営者が高齢になり体力が落ちてからでは、交渉の場でも不利になります。農地の適切な管理が続いている段階で動き始めることで、買い手にとっての魅力が保たれます。
よくある質問
Q. 農地はM&Aで引き継げますか?
引き継げますが、農地法の手続きが必要です。株式譲渡の場合は法人ごと引き継ぐため農地法の手続きが比較的シンプルです。事業譲渡の場合は農業委員会の許可が必要です。買い手が農業法人格を持っていることが前提になるケースが多いです。
Q. 農地を賃借している場合はどうなりますか?
賃借農地は、地主との賃貸借契約を買い手に引き継ぐ形になります。地主の同意が必要になるため、早めに地主との関係を確認しておくことをお勧めします。長年安定した賃借関係が続いている場合は問題になりにくいですが、契約内容の確認は重要です。
Q. 有機JAS認証はM&Aで引き継げますか?
認証は法人に紐付くため、株式譲渡であれば引き継げます。事業譲渡の場合は買い手が新たに認証取得の手続きを行う必要がありますが、既存の栽培体制・実績があることでスムーズになるケースが多いです。
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