福祉用具レンタル事業のM&A・売却|ケアマネ網と月額収益を引き継ぐ【京都】

福祉用具レンタル事業(介護用品貸与事業)は、M&Aで高く評価される業種のひとつです。毎月安定した収入が入るストック型ビジネスであることが、買い手から評価される最大の理由です。

後継者がいない、体力的に続けるのが難しい——そう感じているなら、廃業を決める前にM&Aという選択肢を知っておいてください。

福祉用具貸与事業は儲かるのか——収益構造から見える価値

「福祉用具貸与事業は、続ける価値があるのか」——売却を考える前に、まず自社の事業がどういう収益構造を持っているのかを整理しておくと、判断がしやすくなります。

福祉用具貸与事業の収益は、利用者ごとに毎月発生するレンタル料が積み重なる「ストック型」です。新規の利用者を一度獲得すれば、その方が利用を続けるかぎり毎月一定の収入が入り続けます。飲食業や小売業のように、その月の集客がそのまま売上を左右する「フロー型」とは、収益の安定性がまったく異なります。

利益率を左右するのは、主に次の3つです。ひとつは稼働率です。仕入れた福祉用具がどれだけ貸し出されているか、倉庫で遊んでいる在庫が少ないほど利益率は高まります。ふたつめは利用者一人あたりの平均利用期間です。長く利用していただけるほど、一度の営業活動から得られる収益が大きくなります。みっつめはケアマネジャーからの紹介ルートです。安定した紹介があれば、広告費をかけずに新規利用者が入ってきます。

つまり、利用者数が安定し、ケアマネジャーとの関係が築けている事業所は、派手ではなくても着実に利益を生み続ける構造を持っています。そして、この「安定して利益を生む構造」こそが、M&Aで買い手が最も評価するポイントです。逆に言えば、こうした価値のある事業を、後継者がいないという理由だけで廃業して手放してしまうのは、非常にもったいない選択です。続けられなくなったときこそ、その収益価値を売却という形で回収できることを知っておいてください。

売却価格はどう決まるか

小規模な福祉用具レンタル事業のM&Aでは、売却価格は「時価純資産+のれん(営業利益の2〜3年分)」という考え方で算定するのが一般的です。契約件数や売上規模だけで相場が決まるわけではなく、各社の財産状況と収益性、そして福祉用具レンタル特有の指定・ケアマネ関係・在庫の状況で金額が大きく変わります。

時価純資産の考え方

時価純資産とは、貸借対照表の純資産を時価ベースで評価し直した金額です。福祉用具レンタル事業では、以下の項目が評価のポイントになります。

  • レンタル用具の在庫評価:車椅子・介護ベッド・歩行器など、稼働中のレンタル用具は使用状態・残存年数で評価します。稼働中の用具は「収益を生む資産」として評価され、老朽化・修繕が必要な機器が多い場合は交換コストが折り込まれます
  • 消毒・メンテナンス設備:洗浄設備・消毒設備・保管倉庫の設備は資産として評価されます
  • 配送車両:稼働中の配送車両は中古価値で評価します
  • 倉庫の不動産:自己所有の場合は含み益を加算します
  • 退職給付引当金・未払残業代:簿外債務として控除されるケースがあります

のれん(年倍法)の考え方

のれんは、事業を続けることで生まれる将来の収益価値です。直近1〜3年の営業利益に倍率をかけて算出し、ストック収益が安定しているほど倍率が上がります。福祉用具レンタル事業の場合は、次の要素で倍率が変動します。

  • 介護保険の福祉用具貸与事業の指定を保有していること
  • 福祉用具専門相談員が在籍し、継続意向があること
  • 地域のケアマネジャー・居宅介護支援事業所との信頼関係があること
  • 月次のストック収益が安定していること(継続レンタル契約件数)
  • 給付制限品目の取扱実績があること

参考例

営業利益600万円・時価純資産2,000万円の福祉用具レンタル事業の場合、株価の目安は「2,000万円 + 600万円 × 2〜3年 = 3,200万〜3,800万円」程度になります。ただし実際の価格は買い手との交渉で決まるため、あくまで目安として参考にしてください。ケアマネジャーとの関係が強く、継続レンタル契約が多い会社は上振れるケースもあります。まずは決算書3期分を見せていただければ、おおよその価格帯をお伝えできます。


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のれん倍率を左右する5つの要素

①月次ストック収益の安定性

介護保険の適用を受けた利用者から毎月一定の収入が入るストック型ビジネスです。利用者数が多く、稼働率が高いほど月次収益が安定し、評価が上がります。利用者の平均利用期間が長いほど、収益の継続性の証拠になります。

②ケアマネジャーとの信頼関係

地域のケアマネジャーとの長年の紹介関係は、競合他社が簡単に代替できない参入障壁です。この関係性こそが「のれん」の核心です。ケアマネジャーとの取引関係が会社として継続していれば、引き継いだ後も収益が続くとして高く評価されます。

③福祉用具専門相談員の在籍

福祉用具貸与事業所には、福祉用具専門相談員の配置が必須です(事業所あたり2名以上)。有資格者が在籍し引き続き働いてくれる見通しがあるかどうかが、評価に直接影響します。専門相談員が退職すると指定の維持が難しくなるため、在籍状況は事前に安定させておくことが重要です。

④在庫(福祉用具)の状態

稼働中の福祉用具は「収益を生む資産」として評価されます。老朽化・修繕が必要な機器が多い場合は、交換コストが評価に折り込まれます。在庫の種類・台数・稼働率・状態を把握しておくことが売却準備の第一歩です。

⑤介護保険の指定事業者としての価値

福祉用具貸与の指定を新規取得するには、人員基準・設備基準・運営基準を満たす必要があります。既存の指定事業者ごと引き継げるM&Aは、買い手にとって時間とコストの節約になります。指定を継続して保持していることが前提条件になります。

親族承継・従業員承継・M&A——どの引き継ぎ方が向いているか

事業の引き継ぎ方には、大きく分けて「親族承継」「従業員承継」「M&A(第三者承継)」の3つがあります。福祉用具レンタル事業の場合、それぞれに向き不向きがあります。

親族承継

お子さんなど親族が事業を引き継ぐ形です。経営理念やケアマネジャーとの関係をそのまま引き継ぎやすいのが利点ですが、近年は「介護の仕事を継ぎたい」という後継者が見つからないケースが増えています。福祉用具専門相談員の資格を持つ親族がいない場合、指定の維持に向けて人員を確保する必要も出てきます。

従業員承継

事業所で働く福祉用具専門相談員などの従業員が引き継ぐ形です。現場を知る人が継ぐためサービスの継続性は保たれやすい一方、株式の買い取り資金をどう用意するか、個人保証をどう引き継ぐかが課題になります。資金面でつまずき、話が進まないことも少なくありません。

M&A(第三者承継)

介護事業を営む法人や同業の福祉用具レンタル会社など、第三者に引き継ぐ形です。後継者がいなくても事業を残せること、売却対価を受け取れること、個人保証から解放されることが大きな利点です。指定・ケアマネ関係・在庫といった事業価値がそのまま評価されるため、福祉用具レンタル事業とは相性のよい引き継ぎ方です。「身近に継ぐ人がいない」という場合は、まずM&Aを選択肢に入れて検討する価値があります。

M&Aで想定される買い手

①介護事業を拡大したい法人

デイサービス・訪問介護を運営する法人が、福祉用具レンタルを加えてサービスを多角化するケースです。利用者への一体的なサービス提供と、ケアマネジャーとの関係強化を目的とした買収が多いです。

②同業の福祉用具レンタル会社

エリア拡大・利用者基盤の獲得を目的とした買収です。ケアマネジャーとの紹介ルートをまとめて取得できるM&Aは、同業にとって効率的な拡大手段です。

③医療法人・社会福祉法人

地域包括ケアの一環として福祉用具レンタルを取得するケースです。病院・クリニックと連携した在宅医療体制を強化したい法人が買い手になることがあります。

廃業よりM&Aが有利な理由

廃業すると、在庫の福祉用具の処分費・倉庫の解約費・原状回復費が発生します。手元に残る金額はほぼゼロ、場合によってはマイナスになります。利用者の方は別の事業者を探すことを余儀なくされます。

M&Aなら、稼働中の収益資産として適正に評価され売却対価を受け取ることができます。利用者の方が引き続きサービスを受けられ、スタッフの雇用も守られます。廃業とM&Aで手元に残るものがどう変わるかは、福祉用具レンタル事業の廃業とM&Aの違いでも詳しく解説しています。

京都での福祉用具レンタルM&Aの特徴

京都市は高齢化率の上昇とともに、福祉用具レンタルへの需要が拡大しています。特に京都市内では在宅介護を選ぶ高齢者が多く、福祉用具の利用ニーズが安定しています。地域のケアマネジャーとの連携が深い事業所は、京都エリアの買い手から安定した収益基盤として高く評価されます。

また、京都府内の介護事業者はエリア拡大のニーズが強く、府内に限定しても買い手候補が見つかりやすい業種です。

売却を検討するなら、早めに動く理由

福祉用具レンタル事業のM&Aは、利用者が安定して在籍し専門相談員が在籍している段階で動き出すことが重要です。利用者が減り、スタッフが退職してからでは評価が大きく下がります。

在庫の老朽化が進む前に動き出すことで、時価純資産の評価も高く保てます。「まだ続けられる」という段階から動き始めることで、有利な条件で売却できる可能性が高まります。

よくある質問

Q. 在庫(福祉用具)はM&Aの対象になりますか?

なります。稼働中の福祉用具は収益を生む資産として評価されます。在庫の種類・台数・状態によって評価額が変わります。老朽化した機器が多い場合は交換コストが折り込まれますが、全体の事業価値から判断します。

Q. 指定はM&Aで引き継げますか?

株式譲渡の場合、指定を持つ法人ごと引き継がれるため指定はそのまま存続します。事業譲渡の場合は買い手が新たに指定申請を行いますが、既存の実績・人員が揃っていることでスムーズになるケースが多いです。

Q. ケアマネジャーへの秘密は守れますか?

守れます。交渉の初期段階では事業所名・所在地を伏せた状態で買い手候補を探します。基本合意が成立するまで、ケアマネジャー・利用者・金融機関への開示は行いません。秘密保持は売却支援の前提として徹底します。


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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
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