京都府内で営業している銭湯は、平成22年末には187ありましたが、令和7年末には87になりました(京都府の発表)。京都市の発表では、府内の銭湯1軒に1日に来る大人の客は、昭和57年の227人から、令和6年には107人に減っています。
京都市は、物価の高騰や施設の老朽化、後継者不足から廃業が相次ぎ、銭湯の存続が危うくなっているとしています(2026年8月)。
銭湯の値段は、どう決まるのか
銭湯の入浴料金は、京都府が上限を決めています(統制額)。2025年4月からは大人550円です。上限より高くは取れないので、入浴料の売上は、来てくれる客の数でほぼ決まります。
引き継いでもらうときの値段は、毎年どれだけ利益が残っているかと、建物や浴槽、ボイラーなどの設備の今の値打ちから考えます。土地と建物を持っているなら、建物ごと売るのか、貸して使ってもらうのかも決めます。借りているなら、大家さんが次の人に貸すことを認めてくれるかが先に要ります(民法第612条)。
ボイラーや配管を直す費用は、次の経営者にとって大きな判断材料です。京都府には、入浴料の統制額が当たる銭湯の設備の修繕や更新に、1件100万円以上の工事で費用の15%(上限150万円)を補助する仕組みがありますが、2026年度の受付は終わっています。
新しく開くのは難しく、引き継ぐ人には道がある
京都市では、新しく銭湯を開こうとしても、ほかの銭湯から250メートル以上離れていなければ、原則として許可されません。今ある銭湯を譲り受けた人が、引き続き同じ場所で営む場合だけは、この距離の決まりが当たりません。
京都市は、人口100万人あたりの銭湯の数が、政令指定都市で最も多い街です(2025年度末)。その場所で銭湯を続けたい人にとって、今ある銭湯を引き継ぐことは、ほとんど唯一の道です。
事業譲渡なら、営業の許可を引き継げる
2023年12月13日から、銭湯の営業を譲り受けた人は、営業者の地位をそのまま引き継げるようになりました(公衆浴場法第2条の2)。譲り受けた人は市に届け出ます。京都市では「浴場業承継届」を使います。建物や設備を変えずに引き継ぐなら、届出に検査済証や消防の適合通知書を付けなくてよいと、厚生労働省は通知しています。
会社で営んでいる銭湯を会社ごと引き継いでもらうなら、許可を受けている会社は変わらないので、許可も会社に残ります。個人で営んでいる銭湯は、建物の賃貸や働いている人を一つずつ買い手に移すので、その段取りは個人事業の売却・事業譲渡に書いています。
釜を焚いてきた人と、毎日来てくれる人
銭湯のボイラーは、その大きさに応じて、ボイラー技士の免許を持つ人か、技能講習や特別の教育を受けた人でなければ扱えません(ボイラー及び圧力容器安全規則第23条・第92条)。釜を任せてきた人が残ってくれるかどうかで、次の経営者が次の日から湯を沸かせるかが決まります。番台や掃除を担ってきた人も含めて、働く人の条件は、引き継ぎの話の初めに相手と決めておきます。
京都市は、銭湯を市民の健康維持や防災、地域の交流の拠点と位置づけています。毎日通っている客にとっては、近くの銭湯がなくなれば、別の銭湯まで足を延ばすことになります。
2026年4月からは、府と市と浴場組合が組んで、小学生以下の入浴料を無料にしています。対象は浴場組合に入っている銭湯です。引き継いだ後も組合に入り続けるかは、子どもを連れて来る客にも関わります。
廃業するときの手続き
営業をやめたときは、10日以内に届け出ます(公衆浴場法施行規則第4条)。京都市では「浴場業停止・廃止届」を使い、経営者が亡くなった場合は相続人が、会社が解散した場合は清算人が届け出ます。経営者が急に倒れたときに家族が確かめることは、社長が急死・倒れたら会社はどうなるに書いています。
一度廃業して許可がなくなると、その場所で別の人が新しく銭湯を開くには、ほかの銭湯から250メートル以上離れていなければなりません(市長が特別に認める場合を除く)。廃止の届けを出す前に譲れば、譲り受けた人は距離の決まりにかからずに、同じ場所で続けられます。
引き継ぐ相手として考えられる人
京都には、赤字だった銭湯を引き継ぎ、その後も廃業しかけた銭湯を次々に引き継いで営んでいる会社があります(報道)。始まりは、学生のころにその銭湯でアルバイトをしていた人が、前の経営者から廃業すると聞いて、引き継ぐと決めたことでした(報道)。
近くで銭湯を営む人や、温浴の仕事をしている会社が引き継ぐことも考えられます。
京都で銭湯の今後を考えている方へ
つなぐパートナーズは、京都の小さな会社や個人の事業を、次の経営者に引き継いでもらうお手伝いをしています。
停止・廃止の届けを出す前にご相談ください。その場所で銭湯を続けてくれる相手がいるかどうかを、土地や建物の扱いとあわせて一緒に確かめます。
この記事の数字と出典
| 項目 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 京都府内の銭湯 | 営業中の銭湯 平成22年末187施設 → 令和7年末87施設 | 京都府「子どもの入浴料金無料化事業を実施します!」 |
| 1浴場あたりの入浴者 | 府内1浴場あたり1日平均入浴者数(大人)昭和57年227人 → 令和6年107人。人口100万人あたりの一般公衆浴場数(市内)78.1軒=政令指定都市で1位(令和7年度末) | 京都市 市長記者会見資料「子ども銭湯応援事業等について」(2026年8月17日) |
| 入浴料金の統制額 | 2025年4月1日から 大人(12歳以上)550円・中人200円・小人100円 | 京都府「京都府公衆浴場入浴料金統制額の改定について」(2025年3月21日) |
| 営業者の地位の承継 | 浴場業を譲渡したときは譲受人が営業者の地位を承継し、遅滞なく届け出る(2023年12月13日から) | 公衆浴場法 第2条の2 |
| 配置の基準(京都市) | 一般公衆浴場相互間の最短距離250メートル以上。譲渡があった場合に譲受人が引き続き同一の場所で経営するときなどは除く | 京都市 公衆浴場法に基づく衛生上必要な措置の基準等に関する条例 第3条(三段表) |
| 承継・廃止の届出(京都市) | 譲り受けたとき=浴場業承継届。停止・廃止=浴場業停止・廃止届(死亡は相続人、解散は清算人) | 京都市公衆浴場法施行細則 第5条・第6条(三段表) |
| 停止・廃止の届出の期限 | 営業の全部又は一部を停止し又は廃止したときは10日以内 | 公衆浴場法施行規則 第4条 |
| ボイラーの取扱い | ボイラー技士の免許(一定の小規模なものは技能講習の修了者)。小型ボイラーは特別の教育 | ボイラー及び圧力容器安全規則 第23条・第92条 |
| 借りている建物 | 賃借人は賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡せない | 民法 第612条 |
| 事業譲渡の届出で省ける書類 | 旅館業・浴場業は、施設の構造設備に譲り受けたものから変更がない場合、検査済証や消防法令適合通知書の提出は省略可能 | 厚生労働省通知「旅館業法等における事業譲渡に係る規定の運用上の疑義について」(令和5年11月29日) |
| 子どもの入浴料金無料化 | 2026年4月1日〜2027年3月31日。対象は京都府内の浴場組合加入の約80銭湯。小学生以下が無料(大人の同伴) | 京都市 市長記者会見資料「子ども銭湯応援事業等について」(2026年8月17日) |
| 京都府の設備改善補助 | 統制額の適用を受ける一般公衆浴場。設備の修繕・更新等で1件100万円以上の工事=対象経費の15%・上限150万円(令和8年度は受付終了) | 京都府「京都府公衆浴場設備改善事業補助金について」 |
| 銭湯を引き継いで営む会社 | 京都で赤字だった銭湯を継承し、その後も廃業の危機にある銭湯を引き継いで営む会社がある(報道) | プレジデントオンライン(2026年8月22日) |
| 元アルバイトが引き継いだ例 | 学生時代にその銭湯でアルバイトをしていた人が、前経営者から廃業すると聞き、勤めていた会社を辞めて引き継いだ(報道) | Forbes JAPAN(2020年9月19日) |
最終確認:2026年10月21日
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監修:中小企業診断士・事業承継士 吾郷 泰佑
京都府を中心に、小規模M&A・事業承継のご相談に1,000件以上向き合ってきました。完全成功報酬で、ご相談から成約まで代表が直接伴走します。
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